Critique of Games メモと寸評

http://www.critiqueofgames.net の人のブログです。あんまり更新しません。

『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展に展示していただいております

 本日より、新国立美術館で開始となる『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展ですが、こちらに#denkimeterを展示していただいております。

 http://www.nact.jp/exhibition_special/2015/magj

 …と書いたものの、私自身も予定の調整がうまくいかず内覧会には行けずじまいでして、まだ展示の現物を見ておりませんので、どなたか六本木/乃木坂にお立ち寄りの際には、見てきていただければ幸いです。
 あと、展覧会の書籍にもご掲載いただいております。

 しかし、「展覧会の準備って大変なのかなぁ」とかぼんやり思っていましたが、やはり大変ですね。展示スペースの構成を考えたり、書籍への掲載原稿やらで、けっこう何度もやりとりして、展覧会スタッフの皆様方には、いろいろとお手数をおかけしました。
 何しろ展覧会への出品などはじめてのことでしたので、いろいろと戸惑うことも多かったですが、展覧会スタッフの皆さま方を含め関係者各位に、改めて御礼申し上げます。

 

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 しかし、よく考えると、研究者の立ち位置としては自分のつくったものが展示されるとかじゃなくて、展覧会で、何がどのように展示され、どのような言説によってそれぞれの作品がポジショニングされているか、ということのほうが気になる(というか、気にすべき)ことなわけですが、展覧会のキュレーション・プロセスってなかなか複雑で、展覧会や美術展のような場所で書かれている解説の「言葉」というのが誰の言葉であるのか、というのはよくわからんものですね。

 

 

 今回の例だと、

  1. 展覧会全体のキュレーションをしていただいた方
  2. ゲーム分野のキュレーションをしていただいた方
  3. 展覧会の展示構成をまとめあげ仕上げていく管理スタッフ
  4. 展示の構成を仕上げるデザイナー
  5. 展覧会書籍の編集・ライター
  6. 展示対象作品の作者本人

 と、少なくとも6人ぐらいの作業が介在しているわけですよね。私の展示に関しては、対応する展示対象作品の作者本人が対応して書籍の文章とか、展示の構成案に直接に赤を入れたり、案をだしたりしましたが、これは私が零細企業的なものだからという特殊事情で、ほかの作品に関して言えば作者本人ではなく、アシスタントや作者付きの編集者等のスタッフがこういった展覧会などへの対応をしていると思われます。ですので、関係者はさらに増えて、全部で、8人ぐらいでしょうか。

 まあ、大企業とかが、公式に出している文書とか、お役所の文書とか、もはや「誰」の意思によって書かれたかわからない文章になっているものではありますが、展覧会の文章というのもなかなか不思議な状態にあるものだなというように感じた次第です。

 もっとも、一般的な書籍や出版物であっても、

  1. 著者本人
  2. 編集者
  3. 校正担当者(編集者が兼任することも多い)

 と、まあ、3人ぐらいで作っていて「著者本人」が書いたといえるかどうか微妙なところが0.5%~2%ぐらいあるのが普通ではありますが。

 言説分析、内容分析、テキストマイニング的な研究をするときに、テキストの性質と、こういった作者の多層性を前提に議論を組み立てるみたいな話って、誰かやってそうな気はしますが、どういう議論になってるのでしょうね。まあ、ざっくり言えば、法人格の文書と、個人の署名で書かれた文書の違いということになるのかもしれませんが、そこのところのグラデーションをめぐる議論ですわな。

新年度に際してのもろもろのお知らせ

  1. 肩書が変わりました

 現状の身分、下記になります。

  •  関西大学 総合情報学部(高槻キャンパス) 特任准教授(2015年4月1日~)
  •  立命館大学先端学術総合研究科 非常勤講師(2015年4月1日~)
  •  立命館大学衣笠総合研究機構 ゲーム研究センター 客員研究員(2014年4月1日~)
  •  国際大学GLOCOM 客員研究員(2012年4月1日~)

 実はどこの職場もフルタイムではないのですが、立命館(衣笠)にいる時間がもっとも長いと思われます。京都近辺をお尋ねの際は、水曜~金曜でしたら事前にご連絡いただければお会いできるかと思われます。

 立命館での授業は、月曜2限、10時40分~で大学院生向けに「ゲームとはなんぞや」系の話をなるべくガチな感じで、やっていきたいと思っております。

 関西大のほうは、火曜1限と4限で、学部生向けですので、もう少し間口の広い感じでやろうとおもっております。ゲーミフィケーション、ゲーム産業論などの講義を受け持たせていただくことになりました。

 

 

 2.高校の教科書(英語)に載りました

 

 第一学習社の高校三年生向け英語教科書『Vivid English Communication』にて10ページにわたってゲーミフィケーションが取り上げられ、# denkimeterがその代表事例として紹介されております。

 

https://pbs.twimg.com/media/CBwMkCQVEAEHAMZ.jpg

  

 

2014年度/井上・業績リスト

はっときます。

 

■書いたもの
1,井上明人,「多様な身体を包摂する拡張パラリンピック計画――オリンピックとパラリンピックを融合する新たなスポーツのルール設計」,2015年2月,第二次惑星開発委員会、『Planets vol.9』所収,PP.88~95
2,根本啓一, 高橋正道, 林直樹, 水谷美由起, 堀田竜士,井上明人,「ゲーミフィケーションを活用した自発的・持続的行動支援プラットフォームの試作と実践」,2014年6月,情報処理学会55巻、6号1600-1613
3,井上明人福田一史、鎌田隼介、細井浩一、中村彰憲,「デジタルゲームにおけるプラットフォーム概念の基礎的区分の再提案」,2015年3月,日本デジタルゲーム学会、2014年度年次大会予稿集PP.159-162
4,井上明人福田一史、鎌田隼介、細井浩一、中村彰憲,「コンピュータ・ゲームに関わる諸データベースの問題と可能性」,2015年3月,日本デジタルゲーム学会、2014年度年次大会予稿集PP. 163-166
5,井上明人,連続コラム「ゲーミフィケーション~すべてのデータはゲームになる~」,月刊 日本行政,2014年7月~9月

■研究発表等

1,井上明人,「2020年のパラリンピック」,2014年6月,公共経済政策学会 若手研究会、立命館大学 東京キャンパス
2,井上明人,「2020年のパラリンピック」,2014年12月,公共経済政策学会 2014年度年次大会 、関西学院大学
3,井上明人,「デジタルゲームにおけるプラットフォーム概念の基礎的区分の再提案」,2015年3月,日本デジタルゲーム学会、2014年度年次大会、宮城大学
4,井上明人,「コンピュータ・ゲームに関わる諸データベースの問題と可能性」,2015年3月,日本デジタルゲーム学会、2014年度年次大会、宮城大学

■講演
1,簗瀬洋平/井上明人吉田寛,「ゲームの「ナラティブ」がどうしてこれほど問題になるのか?」KANSAI CEDEC 2015,大阪芸術大学 スカイキャンパス ,2015年2月

■受賞学術賞など
1.情報処理学会,情報処理学会論文誌ジャーナル特選論文,「ゲーミフィケーションを活用した自発的・持続的行動支援プラットフォームの試作と実践,2014年6月
※1st Author は根本啓一。井上はlast Author

セミクローズドな勉強会やりますよ、というささやかな広報。

 9月30日から、セミクローズドな勉強会を、Skypeもしくはgoogle hangoutで、はじめる予定です。前からちょいちょいやってたりしましたが、時間の都合がつかなくなったりして、いろいろと中断したりしたので、正確には再開しますよ、というかんじですが。
 だいたいの勉強会の雰囲気は、下記のような感じの運用になりますが、「参加したい」という方は、井上(hiyokoya6 [ at mark ] gmail .com)までお声がけください。

  • 文献としては、主にゲーム研究に関する人文&社会学系の英語文献の被引用件数の高い文献を読んでいきます。"half real"あたりはスキップします。読んでいる前提で。
  • 参加者は、3ヶ月に一回程度は自分で任意の英語文献についてレジュメをつくって発表してもらう予定です。基本的には人文、社会学系で、博士後期課程~大学教員ぐらいの方を主に想定していますが、ご自分でこの勉強会のために時間のつくれる方、そっち系の英語や人文用語がご自分でなんとか対応できる、という方でしたら特にどのような立場の方でも何の問題はありません。ただし、基本的には専門家が生産性をあげるための互助的な性質の会であるため、あまり親切なフォロー等はないということだけ予めご理解ください。
  • 日本語がネイティヴではない方も参加していますが、ディスカッションは日本語で行います。すみません。
  • あまり参加者が多すぎても、少なすぎても議論がもりあがらないので、だいたい毎回4人~7人ぐらいの参加者でまわす想定です。あまり、参加者が多くなりそうでしたらお断りさせていただきます。
    • ただし、経験上、半年ぐらいこの手の勉強会をつづけると、都合がつかない人がちょいちょい出てきて人が減っていく傾向にあります。ですので、一度「もう人多すぎです」と断れれても、半年ぐらいしたところでもう一度ご連絡していただけると、対応可能になることが多いです。というか、この記事を半年後ぐらいに見つけた方は、一応ご連絡いただければ、状態によっては対応いたします。
  • 「英語文献を自分では読めないけど、中身だけ聞きたいです」という方、もしいらっしゃいましたら、1.連絡窓口、2.MLの管理 3.リマインダー

4.発表担当者へのプレッシャーかけ 5.スケジュール調整 等の仕事を引き受けてくれる方でしたら、1名のみ大歓迎いたします。

読むもの候補:【Google Scholarでの被引用件数の高い文献について】

下記をクリックしてご覧ください。

検索ワード:digital game
http://scholar.google.co.jp/scholar?q=digital+game&btnG=&hl=ja&as_sdt=0%2C5

検索ワード:computer game
http://scholar.google.co.jp/scholar?q=computer+game&btnG=&hl=ja&as_sdt=0%2C5

検索ワード:video game
http://scholar.google.co.jp/scholar?q=video+game&btnG=&hl=ja&as_sdt=0%2C5

検索ワード:videogame
http://scholar.google.co.jp/scholar?q=videogame&btnG=&hl=ja&as_sdt=0%2C5

 Google Scholarの被引用件数が高くない文献でも、重要だと指摘される文献があれば、特に誰もGoogle Scholar教徒とかではないので、その都度ご相談となります。メンバーの中には博士論文かきあげたばっかりな人とかもいるので、博論を聞く会とかに、何回かなったりするかもな、という感じです。

渡辺 修司、中村 彰憲『なぜ人はゲームにハマるのか』を読んだので、著者らまじえてUST読書会をしましたよ

一応、立命館RCGSのイベントということで。
データのURLだけとりあえず案内しておきますね。

  • 参加者(敬称略)
    • 渡辺修司(著者)、中村彰憲(著者)、井上明人(コメントパワポ作成)、松永伸司(Skype経由でコメント)、吉田寛(最後2時間ぐらいコメントで参加)

 それとあと、プレゼンの最後のほうで「この表記は要解説」などとしているところがありますが、著者本人らによる、「補講」の記事が二つほど、SBクリエイティヴにUploadされたとのことです。

著者らと話してわかったことのいくつか

  • 1.まだ議論しながら、モチベーションが高い状態でモデルをつくっている最中でもある。
  • 2.人文系の作法というよりは、中村さん的には、現場の知をどう明示化していくか、というナレッジマネジメントの文脈でやっているとのこと。
  • 3.独自表記は、「サブゲーム間の循環構造」と「選択の分岐」の二つを同時に表してしまっているのではないか、と僕はツッ込んでいるけれども、渡辺体系のなかでは、循環構造は、問題にはされていない。なので、比較的シンプルな体系として一貫性をもっている。
  • 4.「最小単位」「基本単位」云々といったあたりの議論は、少なくとも数年前とくらべるとさほどこだわっていない
  • 5.ナレームについては、渡辺さんは、ナラティヴというよりは、フィクションの構成要素というような意味で使っているような雰囲気が強く、中村さんはもう少しナラティヴよりの文脈のようだ
  • 6.「効率」概念が、「効用」や「満足度一般」の概念に置換可能かどうか。(あるいは置換不可能であるとすれば、なぜ「効率」という概念であるとよいのか、が)まだ要議論、という印象。

 などなど。
 くわしくは、USTをご覧くださいまし。

 渡辺さん、中村さんをはじめご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!

なぜ人はゲームにはまるのか

6月末から当面、京都に移ります

 あと、せっかくなので、一緒に私の所在地について発表を。
 私の移動が決まりまして、6月末から京都のほうに移住地をうつりまして、立命館のRGCS(立命館大学ゲーム研究センター)のほうを手伝わせていただくことになりました。しかも、ゲームのアーカイブまわりのお仕事になります。たぶん、肩書は立命館大学 客員研究員というかたちで。
 まあ、先週お会いしていたというのはそういうことの打ち合わせで、京都に行っていたからだったのですが。
 
 これを言うと、昨年末に炎上鎮火をお手伝いした案件(http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueakito/20131125-00030100/
 について「あいつは、裏で金をもらって記事を書いたに違いない」とか邪推をする人がいると思います。ですが、ご期待に添えず残念ですが、いわゆるステマ的なお金の流れは一切ありませんでした*1。もう、いろいろなところで好き勝手にディスられるのはかまわないのですが、ここは事実関係を自分で言っておかないと、いつの間にかネット上で「ステマ野郎」認定されかねない*2。そういう話題だと思いますけれど、それは違うよ、ということで。
 立命館の細井先生から、具体的にゲームのアーカイブ事業についての打診をいただいたのは、炎上案件からだいぶしてからです。メインの実務担当者である福田さんが、いろいろと忙しくなってきたので、私がとりあえず今年度末までプロジェクトに入れていただくことになりました。
 それと、あたりまえですが立命館では、ファミ通の上で寝たりはしませんよ*3(笑)。

*1:もちろん、私のほうで、アーカイブ事業がらみで金を得ようと思っていたわけでもありません。ここ数年の私の主たる収入源はゲーミフィケーション関連のプロジェクトです。ですんで、ゲームのアーカイブは「自分も支えていかなければいけない重要な基盤事業」だという意識こそあれ、それ自体で自分が今後は飯を食ってやろうという性質のものではありません。私自身が長期的に売っていけたらいいな、と思っている仕事は、「ゲームを遊んでいるときに、どのようなメカニズムが複合的に協同しているか」みたいなことの詳細なモデル化と、その研究応用というところになります。そちらの仕事では、直接には正直なところ、まったく食えないというか……

*2:最近の2ちゃんねるでは、いつの間にか私のことを韓国籍だと騒いでいらっしゃる方もいるようで、何がなんやらわからない気分でもあり…そういう方にはいくら申し上げても無駄だという話もありますが…。

*3:自分の部屋の中に置いていたファミ通は、自腹ですべて電子データ化しております。私個人が自腹で集めた資料は、基本的には保管庫とかを維持する費用が捻出できないので、原則、電子データ化が前提となっております。現物保存を前提としている資料保管、しかも、自腹で集めたものではない資料については、もちろん扱い方が大きく変わりますので。

渡辺 修司、中村 彰憲『なぜ人はゲームにハマるのか』をまだ読んでいない

なぜ人はゲームにハマるのか  開発現場から得た「ゲーム性」の本質

なぜ人はゲームにハマるのか 開発現場から得た「ゲーム性」の本質

 超一部の人向けのエントリです。 
 えー、さて、立命館の渡辺先生と中村先生による本が出たようで、松永さんによる書評も、はてブがたくさんついているようで、盛り上がっているようでよかったです。先週、著者お二人に別件でお会いしました。
 ですが、私、本人はともうしますと、渡辺さんの発表自体は3回ぐらい聞いたのですが、本はまだ読めていない…ありさまで、ええ、まあ、すみません…。
 ひっそりと人生を生きていきたい…。
 そんな日々を過ごしております。
 
 本エントリは、松永さんのコメントについての、コメントというすごい身内向けな内容になりますので、世の中のほとんどの方に、そっ閉じ推奨です。
 「おま、そんなことは、身内向けのメールで書けよ」というような内容で、まあそのつもりだったのですが、書いてみたら、公表しておいたら、公表しておいたで読む人いるかな、と思ったので。まあ、その程度のノリのエントリです。

 で、くだんの

 
 松永さんが気になった点のいくつかは、当然、私も気になったわけですが、一点だけ「ああ、そういう話だったのか」と思ったポイントを

その調節の内実は「最も効率的に達成しうるプレイ手法を選択」することではない。むしろ、自身の能力をもっとも気持ちよく働かせられるようなプレイが選択される(目指される)と言ったほうがいいのではないか

 まあ、これは当然、そう思いますよね。私も思いました。というか、共著者の一人である中村先生ですら、渡辺先生の「効率予測」という用語に「え''っ」となられたという反応をうかがいました。もちろん「スローライフこそが快適」みたいな人からの反論をどう受け付けるのか、というのはすぐに頭にのぼるわけで。で、どうも詳しく伺ってみると、そういうことも、渡辺理論では対応可能だ、とのことです。
 要は「効率予測」という言葉の選択が問題で、「効率」という言葉を使ってはいるものの、もう少し満足度全般を指すような「効用」*1みたいな概念のほうが近いのかな、という気がしました。スローライフみたいな人がわざわざパンをゼロからつくろうという非効率なときをするときにも、そこには満足度が発生するので、そのような満足度のことも「効率」と呼び表そうという意図だとのことです。
 渡辺用語の「効率」が効用とするならば、「効率予測」は「期待効用」が近いのでしょうか。もっとも、ミクロ経済学などの概念と置換不可能なところも、多いと思いますので、同じ言葉を使うとかえって混乱を引き起こすという側面もあるでしょうから、そこらへんは悩ましいですね。
 穏当?なところでは「経済学とも、功利主義とも少し違いますが、類似した意味で<効用>という用語を使いたいと思います」ぐらいのスタンスでご宣言いただくのがいいのかなあ、という気もします。
 

 
 あと、これは発表を聞いている限りの渡辺&中村チームの仕事に対する自分の感想です。
 
 ルドの話の独自表記の作り方とかは、自分でも少し書き写してみて、すこしわかった気になりました。たとえば、ガンパレード・マーチのようにゲームの構成要素が何がサブゲームで、何がメインのゲームなのかがわからないような複層構造をなすような複雑なメカニズム・デザインのものがありますが、そういうタイプの作品の分析・設計の手法としてみた場合には、有効なのではないかと思います。実制作者として活躍していらっしゃった渡辺先生ならではの部分がやはり活きているところがあると感じています。
 一方で、MDAモデルが取り扱うような範疇や、レベルデザインが取り扱うような部分については、現状の渡辺モデルの有効性はまだピンときていないというのが実感ではあります。
 渡辺先生は、さらにレベルデザインとの兼ね合いや、MDAモデルなどとの接続も試みたいと思っていらっしゃるようですので、さらに発展を目指しているのだと思います。ですが、私個人は渡辺先生本人に直接申し上げておりますが「統合理論を目指すというよりは、メソッドや、フレームワークのようなものとして洗練・提示したほうが、活きるのでは」と思っております。説明力の範囲をあえて限定してしまったほうが、固い話になってくるだろうと。

 渡辺&中村チームのモデルの作り方や、議論の順序、議論の提示の仕方にいろいろと危なっかしさがいろいろとあるというのは、その通りで、ご本人たちも自覚があるなか、えいやっと世に問うていて、そういう挑戦はとてもすばらしいと思っています。もっとも、まだ、人文や認知科学あたりの専門の人が見たときに、成果の積極的な意義というのがスッと理解されるには数ステップを踏む必要があるとは思います。

 松永さんが「自分の専門に近いところだと、いちおうお仕事としてやらなきゃいけないので」というコメントとともに突っ込んでいただいていたのは、とても重要なことで、こういうツッコミを安心してやりとりできる状態はいいですね。
 (書籍として刊行される前の段階で、ブラッシュアップができていれば、よりベターではありますが)

*1:功利主義でいうところの効用概念と、経済学の効用概念との違いについても今ひとつわかっていないので、ここらへんは、その手の人のツッコミがほしい