Critique of Games メモと寸評

http://www.critiqueofgames.net の人のブログです。あんまり更新しません。

ゲーム論とサイボーグ

関連論文収集用のページです。

 

◆Keogh, B. (2015). A play of bodies: a phenomenology of videogame experience.

https://researchbank.rmit.edu.au/eserv/rmit:161442/Keogh.pdf

240ページの「Players as Integrated Cyborgs」あたりで明確に「ゲームプレイヤーはハッカーなのではなくサイボーグなのである」と述べている。

 

根村直美. (2011). 生成としてのサイボーグに関する一考察. In 日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第 26 回全国大会 (pp. 89-94). 日本社会情報学会. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasi/26/0/26_0_89/_pdf/-char/ja

───(2006)情報社会における「自己」の多元性:その倫理的可能性,日本社会情報学会学会誌 日本社会情報学会学会誌 18(1), 31-44,日本社会情報学会

 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10484361

 基本的には、シェリータークルの話をしている。

 

 

 

吉田さん「プレイバー論の射程」

読んだので、短いメモ。

 

吉田 寛「プレイバー論の射程」『ポップカルチャー・ワールド概念を用いたポップカルチャー美学の構築に関わる基盤研究 研究成果報告書 2016-2018年度 2018年度
研究集会「インスタ映えの美学 ─溶解する『写真』と『現実』」』室井 尚研究室,pp25-30

https://www.academia.edu/38721485/On_Playbour_In_Japanese_2019_

 

要約:

1.ハッカー倫理的な遊戯と労働が不可分になった感覚と、フォーディズム的な労働時間管理的世界観において仕事の時間とオフタイムがしっかりと分割されるような労働観はそもそも別物だよね、という論点を確認した上で、

2.労働と遊戯が不可分になった「プレイバー」的状況は、ある種の創造的な事態でもあったが、無償労働としての側面ももってしまっていることについて問題提起している。大塚英志も「物語消費」ではなく「物語労働」という概念を使うべきだったと最近は言っている

 

感想など:

  • 前半の世界観の違いに言及するだけでなく、後半の「無償労働」としての論点まで触れていたりするのが好印象。あと吉田さんからレギュラシオンとかに言及があったのはちょっと意外。
  • ゲーミフィケーションとやりがい搾取の話が表裏一体であるという話と基本的には、同種の話ではある。
  • そして、こういう話を読むと、鈴木健なめらかな社会とその敵』の講評会のときの議論を思い出す。近代的な制度区分の中間領域を豊かにしていこうとすると、近代的な制度区分がエラーを起こすので、中間領域をハッピーにしようと思うと、既存の制度との間の調整をやっていかざるを得なくなる https://togetter.com/li/561596
  • プレイバーが無償労働でもありうるという議論自体は、そのとおりだと思うが、これは(A)本質論的な話として提起されている問題なのか(B)それとも今後、制度的な調整をすべく、現状として起こっている社会問題の確認なのか、どちらのものとして吉田さんは主張をしているのだろうか
  • この問題について、私の立場は基本的には、後者(B)であり、プレイバー的な問題に対するガイドラインを作るだとか、制度間の不均衡をなんとかするための方策に向けた議論を、中長期的にやっていかないといけないだろうと思っている。(私自身、そういった活動をしなければいけないと思っているが、残念ながら時間がとれていない。)
  • (A)の立場だとすると、労働や遊戯の概念について、より込み入った議論を展開してくれると面白そうだという気がする。
  • プレイバーの議論に限らずより大きな話をするのであればテクノロジーによってもたらされた既存の社会システムのエラーであり、トリスタン・ハリスとかの議論にもつながっていくものかと思った。https://wired.jp/special/2019/ai-yuval-noah-harari-tristan-harris

 

2019年度からの職位について

2019年4月1日からの職位は下記の通りとなります。

 メインの勤務先は引き続き立命館大学(京都、衣笠キャンパス)となります。前期の月曜は立命館にいませんが、その他の日は概ね立命館のほうで仕事をしているかと思います。

PLANETS vol.10、宣伝と途中までの感想など

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 『PLANETS vol.10』、10月5日に発刊されました。

 さいきん、ネットから少し遠ざかっているなか、研究メモ以外のひさしぶりのエントリが宣伝的なエントリで恐縮なのですが…。

 ふわっとした宣伝&感想などだらだら書きます。

 PLANETS vol.10は、戦争と平和」特集ということで、私の原稿はともかく、伊勢崎賢治×黒井文太郎×橘宏樹の専門家座談会とか、藤井宏一郎さんによる平和マーケティングの話とか、消極性デザイン研究会の話とか、刊行されてからはじめて一読者として読みましたが、とてもおもしろく勉強になりました。

  • 上の原稿:戦争については、言うまでもなく非専門家なので、ゲームの話をする人としての立場から、話せる範囲でなんとか…というところでがんばりました…。PLANETSでやっている長い長い連載の、第一回、第二回あたりからつながるような話になるように、と思って書かせていただきました。
  • 少しだけネタバレしてもいいような話をダラダラすると、ホイジンガホモ・ルーデンスって、けっこう戦争と遊びの相性の話をいろいろとしてるんですよね。『ヴィンランド・サガ』とかで、ヴァイキング同士が、遊ぶように戦っている描写がありますけれど、たぶん、ホイジンガが扱っているのはああいうタイプの戦いのことだと思います。コンピュータ・ゲームにおける戦争って、そういうタイプの祝祭性みたいなものを、まだ系譜として引き継げているとは思うのですよね。一方で、日常風景の中に入り込んだ解決の難しいコンフリクトみたいなもの(いじめとか、差別とか)ってのは、祝祭的な「戦い」とは別のレイヤーの話だと思うのですけど、それが交じるというのがなんかすげぇよな、と思います。
  • 戦争と遊びの関係の歴史というのは、本当にいろいろな話があるので、そこの関係について、どれだけ書けていると言えるかはわかりませんが、それなりに面倒な話の、比較的わかりやすい部分をとりだして書いてみた…つもりです。
  • 伊勢崎×黒井×橘座談会:今回の号の原稿の依頼を頂いたとき、「おわっ、伊勢崎さんたちと同じ誌面で、戦争とかの話するのかよ…やべぇ…いろいろとヌルい話が許されない感じだ…」と緊張したのですが、やはり、伊勢崎さんらの座談会は圧倒的に面白かったです。情報量がすごいので、あまりどういう方向にまとめるというのもアレなんですが、個人的に橘さんがこの座談会のなかで置かれた立場がちょっと面白かったなと思いました。橘さんは一応、学部時代に国際政治学系の話をやられたということなので、戦争関連の話を全く知らんわけではないけれども、そっち系の外交担当とかで仕事をされてらっしゃるわけではないので、質問の粒度が、ほどよく僕の知識量プラスαぐらいの感じで、専門的になりすぎる手前で話を引き戻してくれていたのがよかったです。
  • あと後藤さんによる脚注とキーワードも、非常に読み応えがあって勉強になりました。
  • 藤井宏一郎さんの平和マーケティングの話は、なるほど、これがPLANETSの中に入ってくるのは非常にしっくりと来る…!という、驚異的なフィット感がありました。そして、なんか、細かい話がなんか、いろいろと他人事と思えないところとがいろいろありました。企業の人にこういうところにどうやってコミットしてもらうかとか、本当にむずかしい話を、やってらっしゃって、ただただ尊敬。
  • 消極性デザイン研究会のみなさんの話は、ほのぼのと読みました。

 

 というわけで、お買いもとめいただけましたら幸いです。

wakusei2nd.com

 

ビデオゲームプレイヤーの認知向上・変化について

例によってWiki的な、先行研究整理用のメモです。

 

Green C.Sが、ビデオゲームプレイヤーと、非ゲームプレイヤーを比較して、認知機能に差があることを示している。

  • Green, C. S., & Bavelier, D. (2003). Action video game modifies visual selective attention. Nature, 423(6939), 534.
  • Green, C. S., & Bavelier, D. (2006). Enumeration versus multiple object tracking: The case of action video game players. Cognition, 101(1), 217-245.

 

古い論文だとこれ

  • Griffith, Jerry L., et al. "Differences in eye-hand motor coordination of video-game users and non-users." Perceptual and motor skills 57.1 (1983): 155-158.

 

 

論文メモ:Richard N. Landers

Richard N. Landers

https://rlanders.net/

ミネソタ大学の心理学者、big 5の研究とかをやっていた人だったが、最近はゲーミフィケーションまわりでもいろいろと活躍されていらっしゃるらしい。

 

Defining Gameful Experience as a Psychological State Caused by
Gameplay: Replacing the Term ‘Gamefulness’ with Three Distinct
Constructs

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1071581918304543

・ゲームの経験を多層的にモデル化しようとしている。

・1.Gameful design, 2.gameful systems, 3.gameful experiences の三レイヤーの定義付けを丁寧に行っている。

 

Casual Social Games as Serious Games: The Psychology of Gamification in Undergraduate Education and Employee Training

https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4471-2161-9_20