Critique of Games メモと寸評

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斉藤孝『スポーツマンガの身体』文春新書

スポーツマンガの身体 (文春新書)

素晴らしくくだらない。
斉藤孝さん流の「丹田に力をこめる」「身体論」が炸裂していて、ついていけない感じなんだけれども、最後まで読んでしまった。全般に斉藤さんのオイシイキャラがたまらない(以下、引用)

P18
(大リーガー養成ギブスについて)一見非人道的な道具のようだが、子供たちには当時非常に人気があった。私も、当時流行っていたエキスパンダーという、バネを引っぱって筋肉を鍛える用具を解体して、作ってみたことがある。飛雄馬が素肌の上にそのままギプスをつけていたのに影響されて、私も裸になってエキスパンダーのバネを体中に巻きつけてみた。結果はお粗末なものだった。
 まず、効果がない。バネの巻き付け方が下手だったせいもあるが、投球動作をするときに必要な筋肉に、緊張を与えるようなバネの引っかかりが上手く出せなかった。小学生の私は、それでも大リーグ養成ギプスの効果を疑うことはなく、むしろ一徹の手先の器用さに感心していた。私の作ったギプスには、もう一つ重大な難点があった。バネを伸ばした後、それが縮むときに、皮膚が挟まって痛いのである。あちこちが挟まれて痛くて集中できない。つねられる痛みに耐えたからといって球が速くなるわけではないので、がっかりしてあきらめた。
 しかし、今でもよくできたギプスがあればつけてしまいそうだ

 小学生がエキスパンダー解体して大リーガー養成ギブスまがいのもの作るって…それかなり大変そう…。
 そして、悟ったようにして「まず、効果がない」と力説しているあたりはブラボーです。斉藤さんのこと、好きになれそう。

P26
エネルギーのすべて使い果たして、ぶっ倒れ、這いずって行く。この状態に私たち野球少年は、猛烈にあこがれた。そのために効果があるのは特訓することだった。倒れるまでやるという梶原一騎の美学が、脳にすり込まれてしまった。しかし実際には、完璧に疲れきって倒れるというのは難しいことだ。そこでわざと転がって泥まみれになることで、雰囲気を味わったりした。