Critique of Games メモと寸評

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ヤバイ。『GTAIII』がわかんない。

Grand Theft Auto III【CEROレーティング「Z」】
二ヶ月ぐらい前から、PS2で『GTAIII』を合計で30時間ぐらいはやっている(バイスシティじゃない方)のだけれども、ゲームで理屈を語る身としては微妙に気まずいことに、皆が言っているようなこの作品の面白さが今ひとつ体感的なところでわからない。
クオリティが高いのは、見りゃわかる。でも、ハマってしまう面白さってのがさっぱり響いてこない。まずいなー。ごめんなさい。

で、私としてはうーん、これじゃまずいな、と思って、誉めてる人の議論を色々と読んでみたんですが、どれもこれも「……そう…かな?」といった印象なわけです。

例えば、amazonのレビューを見るとこう書いている人がいます

朝。今日もさわやかに。さっそく自宅の前を通り掛ったタクシーを奪う。アクセル入れっぱなしで信号を悉くブッちぎる。過ってパトカーにぶつけてしまい、追われる。あせって崖を踏み外し、10m下へ落下。車は横転し大爆発。町の人たちが集まってくる所へ火炎瓶を投げ一網打尽。お金を大量ゲット。たまたま近くにギャングのアジトが。パトカーを奪い、サイレン鳴らして突入。逃げ惑うギャングを轢き殺しまくる。夜、スクラップ同然のパトカーを自宅のガレージに入れ、眠りにつく。以上のことは、全てゲーム本編と何ら関係のない所で行う事のできる遊びだ。ゲーム内に社会的、物理的なルールがしっかり構築されていて、邪悪な想像力を働かせればどんな凶悪犯罪者にもなれる。

まあ、こういうタイプの「自由(度)」がすばらしいことを強調するというのがよく言われているところでしょう。Game Studies(http://www.gamestudies.org/)に掲載されている、Ludologyで有名なGonzalo Frascaの長文(http://www.gamestudies.org/0302/frasca/)も、私とは違って、素直に『GTAIII』を楽しめたようで、なぜ、『GTAIII』が楽しいのかということを『シェンムー』との比較分析の上で頑張って議論してます。基本的には、上に引用したレビューの路線で丁寧に議論しているといった印象で
具体的には

  • (1)シェンムーと違って、可能な行動/命令される行動をやっている時に全てが退屈ではない。一般的なゲームの場合は「手段」でしかないような、車での「移動」というアクションすらGTAIIIでは面白いものに仕上がってために、「おつかいをさせられている」感じが抜けている。
  • (2)NPCから人格が排除され、無機質なオブジェクトとして成立させていること。シェンムーの場合は、ハエの幼虫程の知性しかないようなNPCと面倒な会話をさせられてウンザリするが、GTAIIIのような人格のないオブジェクトとのインタラクションの方がよほど楽しい。(殴り殺すのに躊躇もいらないし)
  • (3)目標や物語を押し付けられることがない。ミッションを受け取るためのボスは一人ではなく、好きなときに好きなボスからのミッションをやればいいし、ミッションを行わないことすらたいした問題ではない

といったことを挙げて、結論としてはやっぱ押し付けられる物語のあるゲームよかプレイヤーになんでもさせてくれるシミュレーターみたいなゲームのほうがいいよね(と言っているはず。私の訳が正しければ。)と結んでいます。
いやー、でも、私の感想としてはそれを読んでも「そうなんだー。へー。」って印象しかなくて、やっぱりもともとの面白かった、という体験自体を共有できていないなあ、ということを確認するだけ。
私の思うことはGonzalo Frascaさんとは全く逆で

  • (1)シェンムーのほうが作りこまれていて「おつかい」させられてる印象は少なかった。むしろ、GTAIIIのほうが「おつかい」させられている印象モリモリ
  • (2)シェンムーのほうが、奇妙な受け応えをリピートする人々に囲まれてシュールな世界に迷い込んだような味わいがありました。人格が完全に削ぎ落とされたNPCを殺しても、淡白すぎて、すぐ飽きた。虚構世界がそこに存在しているかのようなリアリティを感じないことには、手触りの空虚な世界に対しては働きかけをしようという意欲がわかない。
  • (3)目標を押し付けられないのは結構だけれども、目標を押し付けられない場合には、他にやりたいと思えるようなアクションが多数用意されていなければダメなわけです。私はGTAIIIで行うことのできる複数のアクションにはあまり魅力を感じることができなかった。

という感じでしょうか。
別にシェンムーをすごい支持するってわけじゃないのだけれども、GonzaloFranscaさんの印象とはぜんぜん逆だな、と。まあ、シェンムーを楽しめた人なんてマイノリティなんだろうけど、とにかく、いくら人の議論を読んでも、「体験が共有できないなー」というところにとどまってしまってます。