Critique of Games メモと寸評

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格闘ゲームは衰退していない――売上げデータから検証する

格闘ゲームは「衰退」した――売れ行きの下降

 所用で、格ゲーについてのデータを調べていたら、そこそこに面白そうなデータが作れたのでちょっと、張っておきます。*書いている当人は、格ゲーについては、そこまで熱心なプレイヤーだとは言えないので、間違ったことを書いていたら、disる前にサクっとつっこんでいただければ幸い。本人の脳内整理のために書いています。

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 さて、「ストリートファイターIIのブームからはじまった格闘ゲームブーム*1は、90年代におおいに盛り上がった……が、00年前後にはほぼ消滅した」というのが格ゲーというジャンルに関するごく一般的な認識だろう。ゲームセンターでの筐体の供給率や、稼働率のデータはちょっと入手が難しいのだが、国内の家庭用ゲームへの移植版の売れ行きをおってみれば、こうした認識に沿った状況はほぼ簡単に確認することができる。
 ストリートファイターシリーズのの国内家庭用ソフトの売れ行きを見てみよう。

 92年のストリートファイターIIを頂点にして、わかりやすく落ちている。
 同じく、カプコンの2D格闘ゲームシリーズ、ヴァンパイアシリーズも、わかりやすく数を落としている。

 アーケードでストIIがリリースされたのが91年。翌92年にSFCに移植されて290万本の売上げを誇り、その後SFCでリリースされた「ストII」と冠するタイトルはいずれも、ミリオンを突破している。だが、その後のストZEROシリーズは売上げを下降させていく。こういった格闘ゲームの「衰退」は、ストリートファイターIIに限らず、ほとんどあらゆる対人格闘ゲームのジャンルで確認することができる。多くの日本のゲームプレイヤーが、格闘ゲームは「衰退した」と思っているし、その実感を裏付けるだけの確個とした状況もある、と言えるだろう。

格闘ゲームは「衰退」していない――世界での売上げ

 …しかし、実は、上記のような「格闘ゲームが衰退した」という認識は、必ずしも全肯定できるものではない。
 なぜか、といえばそれが日本の格闘ゲームの状況だけを元に発言されたものであるからだ。
 実は、先ほどの日本の主要な格闘ゲームの家庭用タイトル売上げに全世界での売上げを足し合わせてみると、格闘ゲームが衰退した、などということは全世界レベルでは、とても簡単に言えない、ということがわかる。下記は、ストII、鉄拳、バーチャなど海外展開されている格闘ゲームの世界での売上げ状況を、みたものだ*2




 これを見てもらえればわかる通り、確かに92年のストIIのブームは壮絶なものがあるが、ストIIブーム以後の世界での売上げを見てみると、実は日本国内での顕著な売上げ減少傾向に比べると、世界的には格闘ゲームジャンルの売上げはゆるやかな下降傾向ではあるが、そこまで大きく落ちてはいない。日本では、対人格闘ゲームというジャンルはもはやまともな商売にならないのではないか、と思えるほど、ひどい状況ではあるが、大きく落ちているのは世界売上げに占める日本国内での売上げ比率であって、格闘ゲームジャンル自体が「衰退した」とは断言できる状況にはない。
 一般に、格闘ゲームの「衰退」と言われているのは、日本国内での「衰退」であって、これは世界での衰退ではないのだ。


 しかし、世界で格闘ゲームが衰退していないにせよ、日本国内が格闘ゲームの売れ行きが大きく後退したことは確かだ。
 これはなぜだろうか?
 なぜ、日本でだけ格闘ゲームはこれほどまでに激しく衰退してしまったのだろうか


 (続く)*3


*追記1:海外だけの売上げ推移だしてくれ、との要望があったので出したなう。2010/04/10 15:13

*追記2:「ドラゴンボールやガンダム、ナルト、BLEACHやJOJOといったあたりの原作付きの格ゲーの数字」が重要なのでは、との指摘。確かに。2010/04/11 14:10

*追記3:『鉄拳6』は出荷数は出ているものの返品制度のある地域での、返品状況がまだ見えない状況なので実売数についてはまだよくわからない状況だと考えた方がよい、と2ch経由から。日本では出荷数をもって販売数と言えるものの、海外では、返品の数字をさっぴいた数字をみないと実売の数字は出てきませんよ、と。2010/04/11 14:13

*追記4:書きかけメモのところにもあまり書いていなかった、海外でのアーケード市場の動向についてきちんと着目すべきだろう、とのご指摘多数。それは非常におっしゃるとおりで、どっかに数字が落ちてないかと探してみているのですが、US/EUでのアーケード市場の動向についての数字が探せておりません。2010/04/11 14:20

*追記5:twitterでいただいたコメントのほうこちらにまとめました。 → http://togetter.com/li/14078

*追記6:「海外市場全体はハイパー成長状態にあるのだから、相対的なパイは低下傾向では」との指摘。もちろん、それはまったくその通りだと思います。そこらへんの、いろいろな事情などは、書きかけとして晒してあるところ、http://www.critiqueofgames.net/data/statistics/kakuge/memo.html でも細々とフォロー……。コンシューマー系は数字がいろいろと追えるので、いいのですが、やっぱりアーケード系とPC系のデータが取得しにくいなう…

*追記7:国内のアーケード事情について興味深いコメントをいただきました→ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1460842267&owner_id=1321085

*追記8:はてブコメント

id:steam_heart さんより

さて。カプコンは戦略として格闘ゲームを切る選択してたんではなかったかな。世相の反映としての縮小が大きいと思うが。あと、バンパイアシリーズはPSでも出てたはずだとか色々忘れられている

バンパイアのPS版が入っていないのは、売上げ上位に入っていないため、データが探しても出てこなかったことが理由です。売上げ500位あたりに食い込んでいないものは、データがとれていません。

id:GEGEさんのコメント

データとるところが間違って…もう言われてるか。

アーケードのデータを取るべきだ、という話でしょうか?それとも、コンシューマーの世界売上げ/国内売上げについても、「より信頼性の高いデータソースがあるはず」というご指摘でしょうか?善処させていただきますが、「データ取るべきところ」をもしご存じでしたらご教唆ください。

*追記9:twitterコメント

http://ceron.jp/url/d.hatena.ne.jp/hiyokoya/20100409

*追記10

http://twitter.com/Egure_Hotate/status/20291407575

なにこれ、経年の売り上げ本数・国内比率をを表した指標がメチャクチャじゃないか。スト?シリーズの売上減の要素は多方面から分析できるし国内比率のタイトル選定条件が不明。

 国内比率のタイトル選定は、国際の売り上げが取得できたデータのみを掲げています。それゆえ、どうしても恣意的な偏りがあるように見えてしまうのですが、これ以上データを拾えなかったということです。
 また、売り上げ減の要素が多方面から分析できるのは全くその通りだと思います。ただ、「多方面からの分析」というものを、単に羅列することはできるのですが、それぞれの要因がどのように効いたか、どの程度それぞれの要因が妥当するのか、といった点について議論を立てられればいいな、と思っています。しかし、単なる記述的推論を行うよりもはっきりとした議論を構築するのが、これはなかなか骨が折れそうだな、といった感触を抱いております。


http://twitter.com/Egure_Hotate/status/20291714234

年ごとの「格闘ゲーム」というジャンルの出荷タイトルの合計と、アーケード基盤の出荷台数や稼働状況とか見ないと「格闘ゲーム」全体が日本国外をコアシーンにしてるとは言えないんじゃないの?

http://twitter.com/tshimizu09/status/20293828371

これ、例えば近頃ではDLC商法が確立されて既に久しいから本体100万本売れてもDLCの売り上げが1万人分な物と本体10万本でもDLCの売り上げが10万人分あった物とで、後者の方が利益出るし盛り上がりがわかるから高評価なのでは?等突っ込みたくなりますね。

 「経験的に充分に強い証拠であるとは言えない」はその通りです。今回出したデータは、単にコンシューマーソフトの売り上げにすぎません。ですので、「アーケードや、DLCの売り上げといったデータから判断すれば、井上の主張は否定される」ということを明確に示す形で、批判をしていただくような仕事をどなたかにしていただければ、きちんとした議論になるので、すばらしいな、と思っております。

*1:ストIIが格ゲーの始祖である、という意味ではない。むしろ、格ゲーの「起源」とは別に、ストIIを契機にはじまるブームのことを指している

*2:データが入手可能だったもののうち、ワールドワイドで50万本未満の売れ行きのものは割愛した。

*3:書いていたらキリがない&説明がおわらない…書きかけの話をだれかにみてもらって、レビューコメント的なものがほしいなう。書きかけの内容は、http://www.critiqueofgames.net/data/statistics/kakuge/memo.html に晒してあります。なお、データ元エクセルはこちらに晒しておきます  http://www.critiqueofgames.net/data/statistics/kakuge/kakuge_sales_for_web.xls 基本的には国内の数字はファミ通の売上げデータがメイン。ほかいろいろと合成