Critique of Games メモと寸評

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IT批評 vol.3 空想科学対談 2025年のIT批評〜「ゲーミフィケーション」が言われなくなる世界で 井上明人


IT批評Vol.3

けっこう長々とした(オーバー二万字)仮想対談を書いております。
ゲーミフィケーションdisをなさっている方にも読んでいただきたく。マクドナルドの話とかも含めていろいろと書きました。
あと、話題の鈴木健さんの本(『なめらかな社会とその敵』)の出版前に原稿書き終わってましたけれども、
まあ健さんとは、けっこう長い付き合いなので、picsyのはなしとかもちょっとだけはいっております。
期せずしてはやりにのった感じで。
ゲーミフィケーションの話オンリーというか、はんぶんぐらいは思想クラスタの話なのですが、そんな感じのものになっております。

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一部抜粋:

「リード文:本稿は、今より12年未来、2025年における、「IT批評」を想定した架空の対談である。ゲーミフィケーションとは、人と人のコミュニケーションのみならず、さまざまな事物に関わるコミュニケーションを更新させるものである。それを延長すれば、現実と人の関わりを調整する概念が視野に入る。本稿で「リアリティ・チューニング」と呼ぶそれは、システムと個人、制度と人間の関係、さらには情報とコミュニケーションの連携の未来を考察させるものだ。2012年に上梓された『ゲーミフィケーション』(NHK出版)の著者の執筆による未来の世界をお届けする。」

池上 話を戻して、ゲーミフィケーションの成功例ですが、2010年代中半には、評判の悪い言葉になっていきました。なぜか、というとゲーミフィケーションの成功例自体は、ある程度の頻度で出てくる一方で、残念ながら「誰でもゲーミフィケーション一定の成果を上げられますよ」という部分にかなり限界がありました。
 たとえば、その嚆矢になったのが、2013年はじめに行われたマクドナルドの「60秒キャンペーン」でした。マクドナルドで注文をした後、60秒以内に商品が出てこなかったら、バーガー類の無料券を贈呈するというサービスでした。しかし、これが、実際には現場では混乱を引き起こしたんですね。ドリンク類だけの注文などならまだしも、アップルパイだとか60秒で難しいメニューも実はかなり多かったし、熟練度の低い店舗だと難しかった。結局、お客さんをイライラさせ、現場のスタッフにストレスをかける結果につながってしまいました。
牛邊 「ゲーミフィケーション」という言葉の反省は、一般のビジネスマンの「ゲーム」という言葉への想像力が乏しかったことに尽きると思います。一般の人は、「ゲーム」というと、どうしても競争の仕組みとか、クイズとか、そういうところに発想がとどまってしまう方が非常に多い。
 私のところに相談に来る人も、まずクイズゲームとか作ってしまわれる方が未だに多い。クイズゲームや競争のゲームを嫌味なくきっちりと作るのは、実は素人にはハードルが高い。
 一方で、ポイントカード的な手法はあまり絶大な効果があるわけではないですが比較的どういう状況下でも激しくネガティヴに機能することは少なめですね。そこの手法間の違いみたいなものが、「ゲーム」と言う言葉によって逆に見えなくなってしまった。


牛邊 現場の人間が一番気をつけるのは、ステマよりも、退出可能性の問題ですね。「ステマ」どうこうというのは、個人的にはそんな心配してません。炎上リスクは気にしますけど、あくまで炎上リスクだけ。
 RTTが強制力をもたないかどうか。特にネガティヴな強制力。たとえば、「田中くんも、大変かもしれないけれど、みんなで頑張って目標を達成しようよ!
やればできるよ!」みたいな声かけとかは、すごく危険なんです。相手のリアリティを変えたいという気持ちはわかるけど、単なる無理強いと変わらなくなってしまうことがすごく多い。一番幼稚なリアリティチューニングで、こういうものをなくすためにこそ…