Critique of Games メモと寸評

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中川大地『現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から』2016,早川書房

  私も最後のほうに、ちょろっとだけお手伝いさせていただいた中川さんの『現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から』が刊行されました。6月に小山先生の本が出たばかりで、またしても日本ゲームの通史の本が出るというのはすばらしいことだと思います。

現代ゲーム全史  文明の遊戯史観から

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から

 

  さて、中川本のよいポイントを書いておきたいと思います。

 

  1. とにかく分厚い。600ページ弱あります。ゲーム系の書籍の中では、『ポケモン/ストーリー』の544ページが知る限り、ゲーム最厚書籍だったように記憶しておりますが、本書はそれを32ページ上回っております。(攻略本は除く)
  2. 具体的なゲームタイトルについての記述が厚い:600以上のタイトルについて触れているようで、海外の著者によるものだと、『死ぬまでにやりたいゲーム1001』という本がありますが、国内ゲームを中心にしたものとしては、これだけのタイトル数を載せたということはそれ自体が重要な仕事かと思います。
  3. さて、以上2点は、即物的な感じの話ですが、もう少し内容面について触れると、1958年の『Tennis for Two』以前の「コンピュータ・ゲーム」の歴史について手厚く触れている点は重要だと思います。何を持って、「ゲームマシン」や「コンピュータ・ゲーム」の起源とするか、という点については議論のあるところではありますが、『Tennis for Two』以前の状況をどう捉えるか、という議論を日本語の書籍でやっているものは、ごく単純にあまりない状況なので貴重な議論だと思います。
  4. また、同様に、ゲームサイド誌などを除くと、国内ではあまり触れられることの多くなかったPLATO SYSTEM上でのゲームについて言及しているという点も貴重だと思います。
  5. そして、本書のもっとも重要な点は、ゲーム史を通じて、社会的/思想的なビジョンを示そうという試みを行っていることです。特に序章・最終章のあたりですね。もっとも、本書で中川さんが展開しているような「西洋 vs 東洋」といった典型的な対立軸にしてしまうと、もっと西洋遊戯史みたいなとこ含めて考え始めるといろいろとツッコミは入りますね、という話とかはさせていただいているのですが、いずれにせよこういったビジョンを示そうとしていること自体がまず重要な点だと思います。

 細かな事実関係については、小山本と同じく、おそらく来月、再来月あたりに色々な指摘が、色々な方からやってくるであろうと思います。なので、中川さんは来月、再来月あたりは、賞賛とともに、そこらへんの指摘をうけつつ、ガンバるというメンタルが要請される数ヶ月になるかと思いますが、本当におつかれさまでした!