Critique of Games メモと寸評

http://www.critiqueofgames.net の人のブログです。あんまり更新しません。

『マナーな食卓』

正式な広報用のURLは、別途作成予定ですが、

『マナーな食卓』をご購入いただいた方向けのとりあえずの情報集約ということで、こちらに簡単な紹介用譲歩をまとめております。

 

<公式ルール>(2021年4月10日更新)

 

『マナーな食卓』


3人用 対象年齢10歳以上 所要時間約20分
内容物: 食材カード(9種類) マナーカード(16枚) 役割カード(5枚)

 

人間、獣人、キノコ人間が共存しているこの世界では、一つの大きな問題を抱えています。それは、「食事マナー」です。なぜなら、他種族のからだが食材になっている料理があるからです。多種族同士で、なかよく、たのしく、おいしく食事をするためには、食材となっている種族に敬意と配慮を払った「食事マナー」が必要です。このゲームでは、料理の食材に敬意を払い、食材の元となる他種族の方に配慮のできたマナーを考えた方が勝者となります。ゲームのプレイヤーはいずれかの種族になり、他種族に配慮した食事マナーを考え、説明し、互いの食事マナーが納得できるかどうかを審査しましょう。

 

youtu.be

 

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2020年度の近況報告

お世話さまです。4月1日ということで、業績書の更新作業をしましたので、一年単位での近況報告です。

CURRICULUM VITAE/履歴書・業績書 - Google スプレッドシート

 

 

1.ゲームや、遊びの提案など

 今年度は、まずボードゲーム『コモンズの悲喜劇』(藤枝侑夏・井上明人、Team Sandbox)をリリースしました………が、Covid 19&ゲームマーケットの中止により、なかなか試遊していただける環境ができず……といった状況でしたので、みなさま、まだ在庫ありますので、ぜひお買い求めください。

tragicomedy-c.jimdofree.com

 

 あと、Covid 19の状況下での遊びの提案ということで、youtube散歩の提案などをしつつ、自分でも、いろいろと撮影したり、アフリカの都市を歩いたりしながら遊んでいました。三宅さん、田端さんらには、発案段階でご相談にのっていただき改めてありがとうございました。

slowinternet.jp

 これは、もうちょっと遊び方をガイドするようなサイトなど作れればと思っていますが、手がまわっていません。

 

 それと、一昨年から『マナーな食卓』というカードゲームを大谷道高や三浦麻乃さんらと作っていたので、4月のゲームマーケットにいらっしゃる方はよろしくお願いします。

 

2.書いたもの

 

 集中力を要するちゃんとした文章は、いつも深夜の漫画喫茶とか、サイゼリアで文章を書くのが常なのですが、今年は、covid 19のため、そのワザがほとんど使えず、正直なところあまり長い文章というのをほとんど書けませんでした。結果的に、今年は文章を書く作業自体が、だいぶ辛い気持ちが強かったという感じでした。自分にとっては、書く「場所」の問題は本当に重要だと実感した次第です。

 

Covid 19以前に書いたものが今年になってリリースされたもの

  • Akito Inoue, Martin Roth. 2020. 「Gamification」『Japanese Media and Popular Culture Keywords』The University of Tokyo Interfaculty Initiative in Information Studies
  • 井上明人. 2020. 「多層的な現象としてのゲーム」『デジタルゲーム研究入門』

 

2020年度に書いたもの

  • 井上明人. 2020. 「游戏论·历史的维度|日本游戏批评小史:“厉害”的游戏文化」『澎湃新聞』 ※日本語で書いたものを翻訳していただきました。
  • 井上明人. 2020. 「「意図せざる社会秩序」の生成を表現するメディアとしてのゲーム」『美術手帖』, 1083, pp90-91
  • 井上明人. 2021. 「『パラッパラッパー』解説原稿」『Ludo musica展カタログ』, , pp18-19
  • 井上明人、尾鼻崇、中村彰憲、細井浩一. 2021. 「持続可能なゲームアーカイブの構築のための専門性についての一考察」『アート・リサーチ』, 21, pp93-102

 

あと、planets連載も、covid 19以後だいぶご迷惑をおかけしていて、下記ぐらいしか書けていない状況でした。

アジアを羽ばたいてしまっている異世界転生|井上明人|PLANETS|note

 

 

3.学会・カンファレンス等での発表

 長い文章は書けずとも、パワポは作れるという感じで、学会発表自体は下記のような感じでいろいろな形でやらせていただきました。

 

4.ゲーム保存関係の事業

 2020年は、2019年までよりも、いろいろな方に頼らせていただいた感じになりました。

 しばらくしたら、下記のサイトのほうで、報告書が掲載されるかと思いますが、

メディア芸術カレントコンテンツ - マンガ・アニメ・ゲーム・メディアアートをもっと知るための情報サイト (bunka.go.jp)

 2020年度は、一昨年まで僕がやっていた仕事の多くを尾鼻崇先生に担っていただき、尾鼻さん中心で、国内のゲーム保存のための連絡会議の開催(ゲームアーカイブ推進連絡協議会)や、ゲーム音楽展の開催、CEDECでの発表などをやっていただきました。

 立命館のゲーム研究センター全体ということでは、同僚の福田さんが中心となって作成した先進的なデータ構造を備えたゲームのオープンデータである、RCGS CollectionがDAPCONでデジタルアーカイブ産業賞 技術賞をいただくなどといったことがありました。

 

4.オンライン授業

 Covid19下で、実質的に一番時間を割かれたのは、たぶんどこの大学の先生もそうだと思いますが、授業でしたね……。アウトプットをお見せできないので恐縮ですが、まあ、大変でした。

 いろいろ、試行錯誤ができたので面白くもありましたが。授業のアシスタントをしていただいた、安田さん、辻さん、木下さんらにもだいぶ助けられました。

 

5.学生指導

 また、2020年度は、細井・井上共同ゼミののゼミ生が、はじめてのゼミ生が卒論を書きあげる年でもありました。指導した学生の論文が学部の最優秀の賞をいただけるなどといったこともあり、私も嬉しかったです。

 また、専任ではないところだと、立命館の先端研の大学院生のみなさんが中心になって実施したマインクラフトのプロジェクトの予算申請書のとりまとめをさせていただいたり、

 京都大学の大学院生の閻さんの修論のサポートなどさせていただきました。

 みなさん、とても優秀で、私が教えられることのほうが多かったです。

 

6.助成金科研費等の応募

 科研費などの大きめの予算への応募で、いろいろな方のご協力をいただき、みなさま、その節は大変ありがとうございました。

 なかなか2020年度は予算獲得には至りませんでしたが、次年度以後も内容をブラッシュアップさせる形で申請していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

7.その他:たくさんの勉強会・研究会・研究プロジェクト

 昨年度はあとは、勉強会がいろいろと盛んだったなというように思います。なんか昨年度は、かなりいろんな読書会やら、勉強会を主催したり、参加していたように思います。

 特に、勉強会を主催していただいた先生方、また私が主催した研究会にご参加いただいたみなさまには改めて御礼申し上げたいと思います。

(ちょっと、勉強会によって外に出していい話だったかどうか微妙な状態のものも多かったので、恐縮ながら、各研究会等の名称は割愛させていただきます)

 これは怪我の功名とでもいいますか、2020年度にみんながオンラインベースになった影響なんだと思いますが、オンラインでの勉強会が昨年はとても沢山増えたなという年でもありました。

 関東と関西の垣根を超えるのはもちろんとして、ヨーロッパ、アメリカ、アジア各国にいる方と一緒に議論ができ、「対面は無理だしね」という割り切りがある意味でよい方向に働いた部分だったかな、と思います。

 

8.肩書等

 昨年度の肩書等の変化は特にありませんが、一橋のCAREEプロジェクトの原先生らと一緒に研究をはじめたことで、一橋CAREEの客員研究員に名前を加えていただくことになりました。ありがとうございます。

 今年、2021年度の4月からの私の肩書等は、特に変わりません(立命館大学映像学部専任講師)が、非常勤を一昨年から一コマ持たせていただいている京都大学文学部に、長年の研究仲間である松永さんが今日から常勤の職を得ることになり、自分のことのように(というか、自分のことよりも)嬉しく思っております。

 

 個人的な体感としては、正直、昨年度は、ほとんど筆がすすまなかったのであんまりアウトプットが出ず、ダメだったなあという感触があったのですが、こうして振り返ると、意外といろいろやってたな……という気もします。

 

 

 みなさま、2021年度もよろしくお願いいたします。

科学リテラシーをめぐるクイズ

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植原さんの本と、標葉、福山、江間さんらの本。

  • どちらも、授業に使えそうな感じだが、大教室での講義用に使えそうなのは、後者の『残された酸素ボンベ』こと、nocobonだろうか。学生の眠気を覚ますためのクイズということでは優れている。ただし、たいがいに理不尽系の答えなので、デブリーフィング混みで使わないと、ただの特殊なナゾナゾのようなものとして消費されてしまいかねない感もあるので、導入にはファシリテーター必須という感触はある。
  • 他方で、植原さんの『思考力改善ドリル』は、問題数も多く「ドリル」という名前の通り一通りこなしたら、だいぶ体系的に考える基礎力を養えるという大きな利点がある。ただ、クラスの中のアクティブラーニング的なものに直接応用するには、もう一工夫必要かもしれない。とはいえ、一工夫程度でなんとかなりそうなので、ゼミとか少人数の講義での「素材」としては、かなり良い気はする。

植原本を、ゲーム的に使うための方策を少し考えてみたい。

都市空間と遊び系、メモ

『Tired of』

note.com

 

遊戯道路と、歩行者天国の制度

歩行者天国 - Wikipedia

 

プレーパーク

プレーパーク - Wikipedia

 

松陰神社通り

http://shoin-dori.com/universal2.pdf

 

イギリスでの取り組み,playing out 。かなり洗練されている。

Playing out - bristol.gov.uk

 

aldo van eyck playgrounds

www.google.com

京都のちびっこ広場

[https://www.google.com/search?client=firefox-b-d&tbs=lf:1,lf_ui:1&tbm=lcl&sxsrf=ALeKk00JztpXYOyi30hjQtqfBPxASDr6Vw:1612097930928&q=%E3%81%A1%E3%81%B3%E3%81%A3%E3%81%93%E5%BA%83%E5%A0%B4&rflfq=1&num=10&ved=2ahUKEwiG-4_knMbuAhWIfn0KHQqMDTcQtgN6BAgDEAc#rlfi=hd:;si:;mv:[[35.029483255930764,135.78054699602183],[34.97576937861992,135.7063034504896],null,[35.00263072515357,135.7434252232557],14]]

伊藤朋子,2013,子どもの「遊び」に関する教育人間学的考察,四天王寺大学紀要 第56 号,pp121-140

伊藤朋子,2013,子どもの「遊び」に関する教育人間学的考察,四天王寺大学紀要 第56 号,pp121-140

https://www.shitennoji.ac.jp/ibu/docs/toshokan/kiyou/56/kiyo56-09.pdf

 

主に、デューイの話を論じている。

 

J. Dewey; How We Think, 1933, p.210.から引用されている、下記の部分

「遊戯性(playfulness)は、 遊び(play)よりも、 より重要な観点である。 前者は、 精神の態度である。 後者は、 この態度が一時的に外部に現われたものである。 事物がたんに示唆の道具として取扱われるとき、 そこに示唆されたものは、 事物をのりこえる。 ここからして、遊びに満ちた態度は、自由(freedom)の態度である。」

ここらのplayfulness概念は、B.Suitsのlusory attitudeとどこまで違うのか、みたいな検討とか誰かやってないのだろうか。

 

 

 

竹野 真帆(2015)『オンラインゲームは若年層に悪影響をあたえるのか?』夏目書房新社

 著者の博士論文である 竹野真帆. (2014). オンラインゲームの訴求力とその若年層への影響を出版したもの。オンライゲームのポジティブな側面を示そうと、いろいろと悪戦苦闘している論文である。本のタイトルは売れ行きとかを考えて、ちょっと変えたということだと思うが、もとの博士論文のタイトルのままのほうが内容に対する誤解は少ない。

 タイトルからして、渋谷先生とか、坂元章先生ライン系の内容だと思っていたのだけれども、そういう内容とはけっこう違った。

 

■「研究I」

序盤の「研究I」ではだいぶ長々とジュネットの話をしたり、ジェンキンストドロフ、ブレモン、バルト、レヴィ・ストロースなどへの言及が続き、物の構造分析手法を応用して、『どうぶつの森+』、MMORPGの『テイルズウィーバー』の分析、『アトランティカ』の三作品が分析される。

■「研究II」

調査1で、インタビュー調査として、小学校1年~6年生までの25名に対して半構造化インタビューを実施し、主に『アメーバピグ』についての調査をしている。

調査2では、同じく『アメーバピグ』を対象にした調査だが、こちらは、中学生に対する非構造化インタビューを実施している。

■「研究III」

最後の研究IIIでも、ひきつづき『アメーバピグ』を主な対象に、チャットデータのログを収集し、テキストマイニングをしている。数量化III類のようなタイプの対応分析として、ここではLSAが用いられている

■「研究IV」

ひきつづき『アメーバピグ』を主な研究対象として据えつつ、公立中学校11校に在籍する3517人にアンケート調査をしている。

 

その他、内容的な要約は、フェリスの機関リポジトリでも公開されているものが読めるので、ご確認いただきたい。

ferris.repo.nii.ac.jp

 

 1987年生まれの著者の2014年時点での博論(フェリスの人文科学研究科)ということを前提でいえば、大学院生の博士課程の論文としては、方法論的にはとても野心的で、人文学的な議論と定量的な議論を接続させようとする意志が感じられる点はとても良いと思う。ゲームの研究分野にこういう若手が出てきているということ自体は、個人的にはとても歓迎できる。

 一方で、指導的なコメント……などというと恐縮なのだが、やはり、こういった内容だと、単純に渋谷先生や、坂元先生のような先生の指導をもうすこし、がっしりと仰いでもらったほうが、ディシプリン的にはクリアーな論文になったかな、という印象は正直なくはない(たとえば、「研究IV」などでは、もう少し先行研究で用いられている尺度をベースにするだとかはできたのではないか、とか、そういう細かなポイントでコメントしたい点はいろいろあるにはある)。

 ……とはいえ、序盤の文学理論系の話とかが混じった話というのは、実験心理系教員の指導ではむしろ難しいものがあるだろう。なので、その意味では、独自路線で論文を書こうという意志を感じる点はそれはそれとして好感を抱くので、ぜひ問題意識を今後、洗練させていって欲しいと思う。

 

 あと、素直に、この著者がすごいなあ、と思うのは、このあとスクエニで『拡散性ミリオンアーサー』『ヘブンストライクライバルズ』などの大変そうなタイトルのディレクターをやっているということで、とてもではないけれど、私などはそういう働き方はできないので、素朴に尊敬してしまう。

 今後のご活躍を期待したい。