Critique of Games メモと寸評

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『コンテンツ消滅』小林雅一

コンテンツ消滅 音楽・ゲーム・アニメ ペーパーバックス
 アニメ、ゲーム、音楽産業のケーススタディを通して、現在Winnyなどによって到来してきた「コンテンツの消滅」の危機の問題にいかに対処するか、というもの。

 タイムリーなだけで、あまりよく調べないで出されたタイプの本っぽいな、と思って期待せずに読んだのですが、思ったよりよかったです。
 ゲームの部分に関してのみ言えば、著者の提案の部分はゲームを知らない人っぽさがただよってましたが、インベーダーの西角さん、中村光一へのインタビューでは、いままでに表にあがってなかったような発言や過去の証言*1もいくつか聞き出せていますし、オンラインゲームの現状についてもコーエーの松原さん*2へのインタビューなどを通してよくフォローできています。ホイジンガや、去年出た『ゲーム産業の経済分析』などといった本にもきちんと目を通しており、ジャーナリストとしての仕事をきちんとできる人だし、している内容です。

 本書のテーマである、インターネットの、特にP2Pの登場などによる「コンテンツの消滅」の危機をめぐる問題については、最後にクリエイティブ・コモンズなどを紹介しつつコンテンツの「完全管理」か「開放」か、の二極ではない第三の道の可能性として、双方の「管理」と「共有」のバランスが取れる状況があったらいいよね、というのを提示するにとどまっていて、各分野への綿密なリサーチが結論へときちんとつながれていないのは残念なところですが。

*1:例えば、ドラクエ5以降に、チュンソフトが一人立ちする以前のチュンソフトの開発状況がひどくて、プログラマーが引き抜かれたり抜けていったりした、という話など。

*2:信長の野望オンライン』の開発の人です