Critique of Games メモと寸評

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ゲーマーに推奨する映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ [VHS]

 ヤバイ。かなりよかった。一般に評判のいい「オトナ帝国」よかずっと面白かった。
 安定感のあるシナリオ、こってりとまとめてあるカメラアングル。そして、最後の戦闘シーンがとてもすばらしくて、良質な3Dアクションゲームをやっているような興奮がありますた。
 CinemaScapeでのレビューを見ると、「西部劇」という道具立てとの対比で萎えまくっている人が多いので、名誉挽回のために書きますが、これを楽しみたいんだったらそんな映画オタ的な視点よか、ゲームですよ。断然ゲーム。『FFタクティクスアドバンス』、『侍』、それとあと『パンツァードラグーン』でも『Rez』でもいいから何か3Dアクションの傑作を2,3本やってから見てみたら本作は多分ぜんぜん印象が変わるでしょう。映像的な水準で言えば、3Dゲーム。世界観は『侍』の西部劇版。シナリオ的な部分で言えば『FFTA(FFタクティクス・アドバンス)』。そういう感じです。

 『FFTA』と同様シナリオについて、すごくベタに見てしまう人は<映画の世界の中でまどろむのを拒否する>という行為にテーマ設定を見出すのかもしれませんが、それよりも本作がすばらしいのはまどろむことを拒否することをごく当然の良識(#であるがゆえに退屈な良識)として保持しつつも、そこでまどろむことへの欲望を隠しえないことをもまた堂々と認めてしまう。そのアンビバレンツな心性そのものが提示されているところにこそ本作の到達が……というか、まあ安心して見ていられるものを感じます。

 あと、同じ日々が繰り返されている風景をCinemaScapeのほうで「恐怖感の漂う」と書いている人がいましたが、それもゲームの世界ではものすごくオーソドックスな恐怖ですよね。『侍』や『FFタクティクスアドバンス』『ガンパレードマーチ』などをやってみればわかりますが、ループしまくる世界の中にドコーンと放り込まれて、終焉はプレイヤーが勝手にどこかで決心して決めるしかない。まどろむことを自ら拒否しない限り半永久的にまどろむことができる<時間の止まった世界>。近年のゲームファンにとってはもはや見慣れた光景といってもいい。