Critique of Games メモと寸評

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私の査読の書き方メモ(人文・社会科学)

 査読の書き方について書いている記事というのが、ネットを探してもあまり、情報量が多くないので、個人的にこころがけている程度のことを書いておく。

 特に、この書き方を守るべきだとか、そういうわけではない。個人的なメモ程度のものだと思ってお読みいただきたい。(なお、国際的なトップジャーナルの査読とかは、下記の基準とは全く違うだろうと思う。)

 

 

書く前に

・該当の論文誌の査読ポリシーを確認しておく。院生のゆるめの論文でOKなのか、それともキツめの線引きなのか。

・読みながら、気になったところは、ページ数、指摘等のコメントをまとめておく。(あとで、査読フォーマットの指定する項目別にコメントは振り分ける)

・正直、「再録可」「微細な修正の上再録」の論文は、査読コメントをあまり気にしなくてもよい。問題は「大幅な修正」と「リジェクト」である。

・「大幅な修正」にしたときに、査読者と執筆者の双方が地獄を見ることがある。特に、学際系の学会誌だと、査読者と執筆者の間にディシプリンの違いがある場合は、単純にうまくコミュニケーションがとれないことがある。そうなるとお互い地獄なので、なるべく丁寧に、早めにリジェクトをお送りするのが結局一番いいと思う。

 

<「リジェクト」と、「大幅な修正」の分水嶺

 リジェクト基準は「2回め以後のやりとりでこの論文を、なんとか著者と一緒にパスところまで、もっていくことができそうだと思えるかどうか」だと思う。データのとり方を直せばいけそうとか、結論と前提の主張の微調整とか、論理展開の微調整とか、そういうレベルの話は「大幅な修正」の中ではかなりラクなほうだと思うし、まあ、いけるんじゃないかと思う。だが、次のようなのは、「2、3回目以後のやりとりでなんとかなる」ということがない可能性が高いと判断している。

・序盤の研究の基本設計からしてだめ →査読では面倒見きれないから、指導教官に頼って!

・前提となる理論がぜんぜん抑えられていない →少なくともあと半年はテーマを絞って勉強して!それから再投稿をたのむ!

・論文の論理展開に致命的な問題が2点以上ある →片方がなんとかなっても、2点目以降が直るのはいつになるのか目処がつかない……指導教官に頼って!

 

<「大幅な修正」で引受けてよいと思えるライン>

  • 明確に論文としての意義が明確なポイントが一点以上ある。なんだったら、その他の問題となる箇所は全部削ってもらえば、論文としての形式が成り立つ。
  • 論文の全体的な内容から、研究者として明確に優秀であることが推測され、具体的に指摘すれば、きちんと修正されたものが返ってくるであろうという期待がもてる
  • 2回め以後のやりとりで、致命的な箇所が直っているかどうかをきちんと議論できる明確な修正基準を、こちらから示すことができる。(基本的に、2回目以後の査読で条件の後付けはできないので。)

 

書くこと

1.まずは投稿者に対して感謝の念を述べる。

2.問題意識として共有できる点をのべ、そのほか、高く評価できる点を可能な限り述べる

3.問題点を具体的に指摘する。

 A.再録条件:確実に修正が必要と思われる点 ※でかいやつが2点も3点もあるようならリジェクト

 B.参考意見1:論争的なポイントなので、言及に注意を要する点 ※まあ、手を入れてもらったほうがいいだろうが、本人に強い意見があるなら、まあ放置でも可。 

 C.参考意見2:事務的な修正(書式、誤字脱字など) 

 

<大幅な修正>

  • 明確な修正基準を伝える。
  • 可能なら、「一緒に論文をよくしていけると嬉しいです」ぐらいの挨拶があってもよいように思う。
  • また、論文の「良い点」について、改めて強調する。

<リジェクト>

  • 明確なリジェクト理由。
  • 加えて、できれば、(あくまで参考意見として)「どのような研究活動つづけたら、論文として、評価可能なものに発展する可能性があるか」を伝える。
  • 論文(というか、問題意識)の「良い点」について、改めて強調する。

 

 

参考

早川智. (2019). 査読の作法. 日大医学雑誌, 78(4), 207-211.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/78/4/78_207/_pdf

 

渡辺博芳、情報処理学会「査読を依頼されたら─より良い査読報告書の書き方─」

https://www.ipsj.or.jp/magazine/9faeag000000yx8j-att/6101ronbun.pdf

 

Chad Musick, PhD, and Caryn Jones「効果的な査読(ピア・レビュー)を行うには」ThinkSCIENCE株式会社|英文校正・学術論文翻訳

 

阿部幸大,2020,

アートとしての論文 人文系の院生が査読を通すためのドリル - Write off the grid. (hatenablog.com)