Critique of Games メモと寸評

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小松 光, ジェルミー・ラプリー『日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす』2021、ちくま新書

  • 読んだ。
  • 右派の人が喜びそうなタイトルだが、PISAデータなどを順当によみつつ、国際的な教育研究における日本の教育の評価や位置づけを述べる落ち着いた内容。主張の仕方が全体的にきっちりとしている感じで、良い本だと言っていいのでは。
  • 主張の内容は、基本的にはタイトル通りではある。
  • 本の内容からはずれた感想になるが、こういう新書は、基本的に記述統計学の範囲内だけで書くもんなんだよなあ……と改めて思った。社会科学関連の新書だと、統計的検定の話とかって言うのは、それほどでてこなくて、学術書だといきなり出てくるという体験をしている人はけっこう多いのではないだろうか。
  • 間を埋めるようなところは、だいたい大学学部の社会調査とか初歩的な統計関係の授業でフォローアップされるわけだが、そこは教育格差としてなにげにひらいてしまうのだよな。
  • 近年は、高校の数学のカリキュラムの中に一応、相関係数とか標準偏差ぐらいまで扱う枠組はできているが、大学生を見ていると、文系の大学生はほとんど理解していないので、「ううむ」という感じはある。
  • もう少し大半の人が習うようなカリキュラムの中に、調査設計の良し悪しとか、エビデンスの強さとか、バイアスとか何かみたいな部分は入れられないかなあと思う。「科学」とか「研究」に関する発想が、漫画に出てくる万能の「ハカセ」みたいなのと、さほど変わらん現状とかってマシにならんのかな、と最近はとくに思う。
  • 英語圏における地球平面論の流行などを見ると、「あー、たしかに日本の教育は、いいほうなのかも……」と思ってしまうが、この2021年における「かなり教育のすすんだ国」のクオリティで現状の日本ぐらいなんです、というのはなんというか、大変だなあ、改めて思う。2021年現在は「民主主義」というプロジェクトを成立させるのはほんとに大変だなと、実感するような事件が目白推しだが2200年とかになったら、世界の教育水準があがって、民主主義ももう少しマシなものになっているのだろうか?