Critique of Games メモと寸評

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7月3日土曜講座:社会を考えるためのゲーム

本日話したことの、簡単なメモです。

 

(1)議論の射程:

「社会」のありようについて考えるためのゲームを紹介する。

(※網羅的な紹介というわけではありません)


例:『We Become What We Behold』(2016)
https://ncase.itch.io/wbwwb

 

 

ゲームならではの表現(の一部)

・多彩で複雑な表現:インタラクティビディ
・社会の複雑な相互行為によって生じるメカニズム
・「体感することではじめてわかる」ことの理解
・沈黙の時間や繰り返し行動を体験・表現できる

本日の構成:作品群を3つに分けて紹介

相互行為のメカニズムを理解する作品
コミュニケーション行為:前提の歪みと、擬似的な「他者」の現前
実世界の記録そのものを使った「ゲーム」


(2)相互行為のメカニズムを理解する作品

作品例


発表者が関わった作品:『コモンズの悲喜劇』(2020)

昔からのゲーム

  •  『Simcity』(都市設計・運営)、『Civilization』(国家の設計・運営)

近年の作品

関連する概念

「合理的な愚か者」「複雑系」「自生的秩序」「シミュレーション」

論点
  • 前提の妥当性と、複雑な計算の正しさ(REF:妥当性 Validation と正当性 Verificationの区別)
  • 前提の再帰的変化:一般に、ゲームプレイのルール(行為環境の前提)は変化しない →ノミック、前提自体を問うためのゲーム http://masa.o.oo7.jp/minimum_nomic_jp.html
  • ゲームが「前提」自体の歪みを扱うことはできるのか?

 

 

(3)コミュニケーション行為:前提の歪みと、擬似的な「他者」の現前


作品例


発表者が関わった作品:『マナーな食卓』(2021)
https://www.youtube.com/watch?v=nfaeXyOrPhg

近年の作品

その他の作品

  • デトロイト:ビカム・ヒューマン』(2018)
  • 『papers, please』(2013)
概念

他者の「顔」の現前(レヴィナス
・社会派というより、ある種「文学的」なゲームで盛んに表現されてきたもの
ICO』(2001)、『UNDER TALE』(2015)

 

論点

あくまで、社会的問題の再構成などにとどまり、ドキュメンタリー映画のように、
現実の素材そのものを、扱えてはいない。

『This War of Mine』(2014)
『attentat 1942』(2017)Charles University, Czech Academy of Science,
https://www.youtube.com/watch?v=-M9UK89K93M
『1979 Revolution:Black Friday』(2016)iNK Stories,

(4)実世界の記録そのものを使った「ゲーム」

作品


発表者による作品:

デジタルゲーム以外の広い意味での「ゲーム」的実践:「サボナ・メソッド」

概念

・ゲームならではの強みを使いにくい

・「ドキュメンタリー」をめぐる議論
  森達也によるマイケル・ムーア批判:主張なのか、現実の別のあり方を想像させるものなのか

論点

記録映像だと、「ゲーム」メディアの独自の表現上の強みを出しにくい
・「遊ぶごとに結果が変わる」ことがない
・「プレイヤーの努力」がどう反映されるのかがわかりにくい

 

(5)まとめ

ゲームならではの表現(の一部)
・多彩で複雑な表現:インタラクティビディ
・社会の複雑な相互行為によって生じるメカニズム
・「体感することではじめてわかる」ことの理解
・沈黙の時間や繰り返し行動を体験・表現できる
現状、ゲームメディアの課題となっていること
・ゲーム前提となるルールを随時変更していくこと
・現実の素材そのものを扱うこと