もう一つ、個人的に興味がすごく重なるのは、樺島さんの話。
第九章 樺島榮一郎「ポピュラー音楽におけるインディーズの成立」(pp237〜pp262)
現在のインディーズの繁栄は、制度化された新規参入の機会、アーティストおよび消費者が状況を見晴らすことのできる情報共有の仕組み、開かれた流通プラットフォーム、個人で賄える範囲に低下した音楽活動の費用、という4つの条件が、お互いに関連し合いながら成立したために、起こったことを明らかにした。(p256)
第1に、後述する展示・情報共有の場への新規参入の機会が制度として設定され、新たなコンテンツ制作者に、広く開かれていることである。インディーズの場合は、ライブハウスのオーディションが主にこの役割を果たしている。第2に、消費者のみならず、多くのコンテンツ制作者が参加し、数多くの他者のコンテンツを見て技術や流行などの状況を広く知ることができ、制作者間でネットワークを広めることができるような、展示・情報共有・ネットワーク形成の場(ショーケース)が存在し、それが活発であることである。インディーズの場合、ライブハウスでの活動とレコードの流通がこの部分を担っている。一般に、アーティストの活動や評価が上がるほど、コンテンツが広く知られ、他者のコンテンツに触れる機会も多くなり、制作者間のネットワークも広がる傾向にある。第3に、コンテンツの制作に垂直統合されておらず、物流、商流ともによく整備されてコンテンツ制作者の負担が少なく、かつ新規参入者にも開かれた流通プラットフォームが確率していることである。インディーズにおける流通プラットフォームは、1980年代前半から形成されはじめ、2000年ごろに完成したと言える。第4に、個人レベルでの新規参入を可能にし、継続的に展示・情報共有の場で活動していける程度に、設備投資と運転資金が低いことが挙げられる。ポピュラー音楽の場合、演奏のための設備投資や運転資金は以前から個人で十分に負担できるレベルではあったが、プロレベルの録音が個人レベルの投資でできるようになったのは、ITの進歩によるところが大きく、90年代半ば以降である。個人の負担は、アーティストがプロに近づくほど減少していくと言えよう。第四に、コンテンツの流通が制作と切り離され、プラットフォーム化されていて、開放されていることである。インディーズでは、90年代半ばごろから、プラットフォーム化された流通が整備されはじめ、2000年にメジャーとほぼ変わらない流通プラットフォームが完成した。
近年のインディーズの繁栄の要因は、上記四つの条件を実現する環境や仕組みが向上したことにある。(P240〜)
樺島さんのここらへんの話は、ぼくが、前にした話(ノウハウ教育、技術基盤、流通、評価、収益、決済経路のプラットフォーム間連結が必要)ともかなり同じような発想ですね。
で、樺島さんの話に対して、ぼくのほうでもう一つ付け加えたいと思っている話は、は広告・宣伝・流通・制作・ライブといった単位のモジュール化をどう扱えばいいのか、ということでしょうか。樺島さんが論じている通り、複数の要素が開放されプラットフォームとして機能しているのが重要というのは、視点としては全く同意なのですが、
- 1.単にオープンなだけでは不十分で、<機能している>と言いうる程度に連携が保たれるための条件をもう一つきちんと考えてやる必要があるだろう、と。
- 2.どういった「モジュールのサイズ」が適切か、というのは実は分野ごとに条件が違っていて、そこが難題だろう、と(というか、この話って、解けるとしても数学的に解ける、とかそういうのが限界な気もする)
という二点をどう考えるか、というのが僕の側で考えている課題、といったところです。
あと、樺島さんの話に近そうで、かつ、最近みんな読んでいるジョナサン・ジットレイン『インターネットが死ぬ日』(ハヤカワ新書、2009)の生み出す力の話もついでのメモとして引用しておこう。
(P128)
何が、ある物に生み出す力を与えるのだろうか。以下のように、基本的に五つの要因が考えられる。
1.テコの作用により、どこまで作業を簡単にしてくれるか。
2.幅広い作業にどこまで対応できるか(順応性)
3.どのくらい簡単に使い方を学べるか(習熟性)
4.新しい活用方法を作り出す意欲と能力を持つ人がどのくらい簡単にアクセスできるか(アクセシビリティ)
5.専門家以外の人にも(おそらく、特に専門家以外の人へ)どのくらい簡単に改変を伝承できるか
ゲームの話にコンバートすると、こんな感じだろうか、
- 1.テコの作用
- → ライブラリ、ミドルウェアの話。大規模開発の開発予算・スケジュールを縮めるためにはクソ重要。
- 2.順応性
- → C++などのプログラミング言語の技術。制作のために汎用的に使える技術。汎用性がそこまで高くないツールしか使えないと、狭い範囲の課題に対してはプロフェッショナルになれても、課題の範囲が広まった時にしょぼーんなことになるという罠。
- 3.習熟性
- 4.アクセシビリティ
- → 技術・流通・収益プラットフォームのオープン性(樺島さんのはなしとか、新さんのMODツールのオープン化の話につながるところ)。
- 5.簡単に改変を伝承できるか
- → 技術伝播の効率性の問題。オープンソース系の簡易な言語のプロジェクトとかだと、技術伝播の効率性は高い……けれど、ソースコードレベルでの改変の伝播はほとんど行われず、一度ミドルウェアなり開発フレームワークなりライブラリのような中間的なパッケージを介さないと、そんなに技術伝播は容易ではないやも。
- ライブラリだとかのようなものでないとすれば、三宅さんががんばっているような活動だとか、技術解説系のウェブサイトだとか、GDC/CEDECみたいな各種の技術系カンファレンスが一定の役割を果たすわけで、ここで日本はいつも負け気味になる問題。
また、ジットレインの話でほかに、個人的におもしろいな、と思ったのが「生み出す力が強い例」と「生み出す力が弱い例」というものを挙げていて、そこでゲーム/おもちゃというまとまりで次のような表を描いている(P136)
生み出す力が強い例 | 生み出す力が弱い例 | |
サイコロ、トランプ | ボードゲーム | サイコロとトランプがあれば、さまざまな種類のボードゲームが楽しめる。ボードゲームは、基本的に一種類のゲームしかできない。アクセシビリティはいずれも高い。サイコロとトランプは同じように、モノポリーのボードと駒、お金を使い、まったく違うルールの遊び方を考えることもできる |
レゴのレンガ、プラスチック製柱とパネルの製作セット、組立セット | オモチャの家(完成品) | レゴなら家にすることもできるし、その他さまざまな使い方ができる。オモチャの家も遊び方次第で用途が広がる。レゴほどの柔軟性はないかもしれないが、いろいろな出力が可能なプラットフォームとなれる。つまり、ボードゲームと比較すればオモチャの家のほうが肥沃なオモチャだと言える。 |
チェス、チェッカー | 四目並べ | 昔から、さまざまなゲームでチェスやチェッカーが使われてきた。構成部品を使ってまったく異なるゲームを作ることも可能である。 |
エッチ・ア・スケッチ、クレヨン、紙 | 塗り絵帳、ペイント・バイ・ナンバース | |
ボードゲームを「生み出す力が弱い例」としているあたりは、慧眼だな、と思う。
だいぶ昔にid:hallyさんも書いていたように、ボードゲーム(特に双六)というのは、ソフトウェアのデザインとハードウェアのデザインを統合したオモチャになっている。チェスやトランプなどは、ハードウェアを使ってどのようなルールを構築するか、ということは無限にバリエーションがあるが、ハードモジュールと、ソフトモジュールを一体化させているのがボードゲームだ。よく言われるコンピュータゲームの「ルールが変えられないオモチャ」*1というのは、要するにハード/ソフトのモジュール化がない状態で、ぜんぶ一緒くたになってるものだ、ということだ。
で、ちなみに、「自由度」をめぐる議論なんかは、
- (1)「サイコロ」型の、ハード/ソフトがモジュールとして分離しやすい『Oblivion』『GTA』『Sims』(Sim People)のようなSandbox typeと呼ばれるゲームの「自由度」の高さをめぐるはなしと、
- (2)「双六」型の、ハード/ソフトが一体化していて切り離せない(という側面が強い)、『タクティクス・オウガ』、みたいな「自由度」の構築の話。これは、話の分岐ルートを全部つくらなければいけない。
とで大きく分かれるのだよね。後者はすげー大変で、松野さんみたいなネ申がいないことには、プロジェクトとして実現しようと思うと、まじで死ぬ。っていうか、ネ申が降臨しているプロジェクトであっても、ほぼ確実にデスマーチ上等だろうなーっていう。
ほとんど、後者のタイプの「自由度の高い双六」のような作品製作は途絶えてしまって、両者の手法の合成されたような『ガンパレードマーチ』みたいな方向を目指すか、「単なる一本道双六」=ファイナルファンタジーのようなものをシコシコつくるか、という二択だよなー、とかつらつらおもった。
**
ちなみに、ジットレインにせよ、ぼくが一昨年にした話にせよ、樺島さんの話にせよ、(あと、七邊さんの同人の話*2にせよ)、そうなんだけれども、
基本的に、この手の 話って、どうしても指標をシンプルな形で、単一化しにくい。合成変数の話になってしまう。
ジットレインは、「生み出す力」の話をしたあとに、フリーソフトウェアの話をして、コモンズの話をして、アフォーダンスの話をして、モジュール化の話をして、エリック・フォン・ヒッペル(民主化するイノベーション)の話をして、という話になっていく。まあ、言いたいことはとってもよくわかるというか、禿同なんだけれども、定性的な議論から一歩抜け出せない。この議論自体が、他の議論を喚起するような汎用的概念・汎用的モデルとしての強みを持ちきれずに、他の議論へと応用しにくくなる。
リチャード・フロリダなんかは堂々と、合成変数を使って、定量的な分析なんだ、ということにしてしまって議論を構成して、「クリエイティヴ・クラス」の話をぶちあげていた。……わけだけれども、合成変数って、「おまえ、その合成変数の根拠は何よ」とか言われると、超びみょーな雰囲気になる。(%% 合成変数自体の妥当性を何かしらの別の指標と、パラレルに並べつつ、合成変数の妥当性をどうにかして担保できていれば、いいのだろうが、フロリダってそうしてたっけ?忘れた。読み直そう%% → 読み直したなう。そういう議論構成になっていた。P315「地域のクリエイティヴ・クラス人口比率*3、才能指数(一人あたりの特許件数)、ハイテク指数(人的資本を単純に学士号以上の学位を取得した人工の比率として測定)、イノベーション指数(一人あたりの特許件数)、ハイテク指数(ミルケン研究所のハイテク都市指数に基づく指数で、その地域におけるソフトウェア、エレクトロニクス、バイオメディカル、エンジニアリングサービスなどの成長産業の規模と集中度によって測定)」という四つの指標との相関がとれるかどうか、ということを合成変数の妥当性を担保するための前提として使っていた。)
理想的には、定性的な議論にしてしまうなら、よっぽど人をハッとさせるような気づきを与えるような事例を一つか二つもってくることができるか、あるいは、スコット・ペイジ『「多様な意見」はなぜ正しいのか』(2009,日系BP)でやっていたシミュレーションや、数学を用いたモデル化ぐらいまでしてやらないと、今ひとつ、インパク値&応用可能性が高い話になりにくいよなー。
合成変数で話をしてしまうのも一つの手なのかもしれないけれど、まっとうに考えると、複数の指標を合成した変数で計るよりも、複数の制度間均衡とかがけっこう複雑に絡み合って成立するような話であるような気もする。…なので、それぞれの指標間のトレードオフだとか、ゲーム形みたいなものをちゃっかりモデル化できればそれが一番キレイだろうなあ、とかおもう。まあ、トレードオフ構造とかを下手に細かくモデル構築しすぎても、誰がそんな細かい話を読むんだYO!的な地味ーなものになっちゃうのかもしれないけれど。
なんか、だらだらとまとまりのない話を書いてしまったなう。
とりあえず、最後に、井上/樺島/ジットレイン/ヒッペル/池上英子/フロリダの比較表でもはっておくなう(つくりかけ)
まあ、「ちょwwおまww並べるのはおこがましいだろw」というツッコミはあえて聞こえないことにする。
論者 | 対象ドメイン | 主張 |
---|
ジョナサン・ジットレイン[2008=2009] | 生みだす力generativity、が重要なドメインいろいろ | 1.テコの作用により、どこまで作業を簡単にしてくれるか。、 2.幅広い作業にどこまで対応できるか(順応性)、 3.どのくらい簡単に使い方を学べるか(習熟性)、 4.新しい活用方法を作り出す意欲と能力を持つ人がどのくらい簡単にアクセスできるか(アクセシビリティ)、 5.専門家以外の人にも(おそらく、特に専門家以外の人へ)どのくらい簡単に改変を伝承できるか |
リチャード・フロリダ[2007,2008] | 「クリエイティヴ・クラス」のドメイン… | 技術、才能、寛容性の高い地域が重要になるとの前提に、クリエイティヴ資本理論では「地域の経済成長は、多様性があり寛容で新しいアイデアに開放的な場所を好むクリエイティヴな人々が原動力となる」ととらえる。、クリエイティヴ資本を惹きつけ、ハイテク産業の成長を刺激することを検証するための指数としてCDI(合計多様性指数)を作成。これは1.メルティングポット指数(移民の集中率を元にした指数。*4、2.ゲイ指数(非婚のパートナー関係が同性によるものならば、ゲイまたはレズビアンとみなし、国勢調査を元に地域集中度を調査。*5のMODの話に言及して「メーカーがプラットフォーム製品で一定の儲けを確保しさえすれば、ユーザーによる補完製品の開発と提供は、社会福祉の観点からはプラスの効果をもたらすはずだ。なぜなら、手に入りやすい補完製品の存在は、ユーザーにとってのプラットフォームの価値を上昇させ、その結果、メーカーはプラットフォームに高い利幅を確保したうえで売上げ数量を増やすことができるからである」と書いている。この話って、valveがMODプラットフォーマーみたくして、定期的に利益の生み出せるビジネスをやってたら、まったくもっておっしゃるとおり。でも、実際には、Valveはカウンターストライクとか、ハーフライフをパッケージとして売っていたので、補完財がただで手に入るビジネスをやりすぎてしまった結果、「次の製品」を購入させるための、ビジネスモデルが構築できずに困ったわけだよね。 話はWindowsについてもおそらく同様。Windowsがオープン化をどんどんしてAPI公開をして、補完財がただで手に入るようなビジネスをやる合理性は、Windowsのバージョンアップ製品をその後もユーザーさんが買ってくれるということを前提にしていないと成り立たない。あるいは、ユーザーから金を取らないのであれば、Googleみたいに、広告とかで金をとってくるだとか何かしらの別のマネタイズをしないと死ねる。 にしても、すごいまとまりない話をメモってしまったな、とおもってしまっている、なう。
|
エリック・フォン・ヒッペル[2005] | 「民主化するイノベーション」のドメイン…(話の構成がほかとはけっこう違う) | 1.互酬性のあるユーザー・コミュニティが有効に機能(p139、第7章) 2.情報の無料公開に対してのインセンティヴが働く場合(名声、恩返し、転職市場における利益、ネットワーク外部性がありうる場合など)、 3.低コスト・イノベーションが有効に機能(p101、第五章)(集合知が成立するための多様性が・分散性が活きるという話) 4.標準化された製品ではなく、カスタマイズしたものを作るプロセスにユーザーが大きな価値を認めるような状況が、有効に機能(※いわゆる功利的選択というよりは、製品をカスタムすることに内発的動機付けのなされた状態。第四章)、 など(いずれも、定量的データによる裏付けあり)、こうしたユーザー主導のイノベーションを起こすための公共政策として(A)知的財産権の見直し(レッシグ的な話)(B)製品改良に対する制限の見直し (C)流通チャネルに対する規制の見直し、(D)研究会開発(R&D)助成金と、税控除の見直し などを挙げている …さらに加えて「ユーザー・イノベーションのための高品質なツールキットの、5つの重要な特徴」として、 (1)ユーザーは、試行錯誤を通じて学びながら次に進むという完成したサイクルをたどることができる。 (2)ユーザーが作り出したい設計内容を実現できるソリューション・スペースが提供される (3)専門的な訓練をほとんど受けることなく操作できる、使い勝手の良さを提供する。 (4)ユーザーがカスタム設計に使うことのできる標準的モジュールのライブラリーが含まれている。 (5)ユーザーによって設計されたカスタム製品やサービスを、メーカーが手を加えることなく生産設備で生産することができる。
|
池上英子[2005] | 俳句などの趣味を介した江戸時代の広範囲なネットワーク・絆 | 1.農民でも参加しやすいネットワーク(5,7,5と季語を覚えればとりあえず参加可能)、2.ローカルな「茶会」コミュニティと出版技術を通じた全国的ネットワークの形成、3.ヒエラルキーを超えたフラットな関係性の構築、などなど(いまちょっと手元にないのでうろ覚え) |
樺島榮一郎[2009] | 音楽のインディーズ | 1.制度化された新規参入の機会、 2.アーティストおよび消費者が状況を見晴らすことのできる情報共有の仕組み、 3.開かれた流通プラットフォーム、 4.個人で賄える範囲に低下した音楽活動の費用
|
井上明人[2008] | コンピュータ・ゲームのインディーズ/同人などの「ゲームをつくる文化」の話 | 1.ノウハウ教育、 2.技術基盤、 3.流通、 4.評価、 5.収益、決済経路のプラットフォーム それぞれがオープンであるだけでなく、「連携」して機能しやすい状況になっていることが重要。ネットワーク間の相互作用を機能させることがマジ重要。また、ウィル・ライトが指摘するような、ユーザーコミュニティのエコシステムが成立していることによって、多様性と、段階的なコミットメント(コミットメントのレベルデザイン)が成立している、ということも極めて重要。要素間にはトレードオフもある。 |
あと、ちょっとズレるけれど、この手の話は、「生む力」的な議論であると同時に、
集合知的な話にも、接続されているので、ジェームズ・スロウィッキーと、スコット・ペイジの「
集合知が機能するための条件」と、の話も載せておこう。
論者 | 対象ドメイン | 主張 |
ジェームズ・スロウィッキー | 集合知がうまく機能するための条件 | 多様性(似たもの同士の集団だと、それぞれが持ち込む新しい情報がどんどん減ってしまい、お互いから学べることが少なくなる。)、 独立性(同調圧力や、ケインズの美人投票、沈黙の螺旋…情報カスケードの起こりにくい状況)、 分散性(問題に近いところにいる人ほど、優れたソリューションをもっているはず)、 集約性(システムの一部が発見した貴重な情報が、必ずしもシステム全体につたわらない可能性がない。複数の情報をうまく集約する仕組みが機能している) |
スコット・ペイジ | 多様性が能力に勝る、ための条件(P207〜) | 条件1:問題が難しい(どのソルバーも個人で必ずグローバル・オプティマムを見つけられることはない。) 条件2:微積分条件(すべてのソルバーのローカル・オプティマムをリストに書き出すことができる。すなわち、すべてのソルバーが賢い) 条件3:多様性条件(グローバル・オプティマム以外のすべての解が、最低一人のソルバーにとってローカル・オプティマムでない) 条件4:大勢のソルバー候補からかなりの大きさの集団を選ぶ(ソルバーの母集団は大きくなければならず、一緒に取り組むソルバーの集団にはある程度の人数のソルバーが含まれていなければならない) 多様性が能力に勝る定理:条件1から条件4が満たされれば、ランダムに選ばれたソルバーの集団は個人で最高のソルバーからなる集団より良い出来を示す |
ヒッペルとか、ちょいちょい読み直しておもったけれど、ヒッペルの話って、はじめ読んだとき、「比較的、手堅いけど、なんか今ひとつ意外性のある話がすくないなー」とか思った記憶がある。しかし、この手のふわふわした話をある程度まで「手堅く」やってるの重要ね。ほんと。あと、146ページで、Jeppesen[2004]((Jeppesen, L.B. 2004 Profiting from Innovative User Communities. Working paper, Department of Industrial Economics and Strategy, Copenhagen Business School、なお、この話の日本版としては
新清士[2008]「MODおよびオープンコミュニティについて調査」(財団法人デジタルコンテンツ協会『デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究報告書』財団法人デジタルコンテンツ協会発行)などに詳しい