Critique of Games メモと寸評

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『コンテンツ産業論』だいぶ遅れて謹呈御礼+ジットレインの生成力のはなしとかダラダラとまとまりのない話の書き散らし

コンテンツ産業論―混淆と伝播の日本型モデル

コンテンツ産業論―混淆と伝播の日本型モデル

小山先生にいただいた。

個人的にも問題意識の近い話がとても多くてたのしいです。

コンテンツ産業における大規模開発をどう考えるか


小山先生の問題意識は特に、コンテンツ産業における大規模開発システムをどのようにとらえればよいのか、ということでしょうか。


まず、最初に第三章 小山友介「2つのコンテンツ産業システム」(pp61〜pp90)で、

 ハリウッドのビジネスモデルは 1)制作者のプロフェッショナル主義、2)厳密な権利管理 3)大作指向(ブロックバスター戦略)による、ハイリスク・ハイリターンのビジネス、で特徴づけることができる。ハリウッドのこれらの特徴は合理的計算から生まれてきたのではなく、発展史の各局面での現状への適応が積み重なってできあがったものである。
 漫画・アニメ・ゲーム・ライトノベルといった世界で注目されている日本的コンテンツを生み出している環境には、1)制作者のプロ・アマの境界が曖昧さによって生み出された膨大なクリエイターとその候補者たち、2)緩やかな権利管理、3)大規模作品のみでなく中小を含めた分厚い市場、といった特徴がある。(P61)

と書き、コミケみたいなものとなだらかにつながった日本のコンテンツ産業と、ハリウッド型の大規模作品開発システムを別のビジネスモデルだと位置づけます。
 しかし、その後、ゲームビジネスについては近年は顕著に「ハリウッド化」=大規模開発が進行してきており、その波に対してどうすればいいんだろう、というところで、第十章 小山友介「家庭用ゲーム産業の「ハリウッド化」」(pp263〜pp285)という議論がなされます。いろいろと、ゲーム産業の日米比較についてバランス良く目線を配った議論をした後に、

 現在の日本企業は大きなジレンマに陥っている。すなわち、「日本市場向けにDSとWii向けの開発体制整備にリソースを振り分けると世界市場で不利となり、世界市場向けにPS3Xbox360にリソースを振り分けると日本市場で不利となる」のである。また、2008年に日本で一番売れたタイトルがPSPの『モンスターハンターポータブル 2nd G』であったように、新しいタイプのゲームの売上が少し弱まり、旧来型のゲームが盛り返しつつある。今後、日本企業の世界市場での地位は、「ゲームは任天堂が描くような構造変化を起こすのか」、「日本で構造変化が起こるとして、今後、世界のゲーム市場も日本と同様の構造変化を起こすのか、起こすとすればいつなのか」にかかっている

 と結論づけています。
 細かいところでは異論もありますが、大筋では同意できる議論か、と思います。