Critique of Games メモと寸評

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ゲーム学会 全国大会第七回

 先日の土曜日(12月6日)DiGRAじゃなくて、関西の大阪電気通信大学でやってるほうのゲーム学会で発表してきました。
 http://www.gameamusementsociety.org/2008/Taikai.html
 大阪電気通信大学四条畷キャンパスははじめて行ったけど、すっごい山の中にあって驚いたヨ……駅から遠いヨ……でも、なんかあまりにも、山の中にあったので、まるでピクニックに行ったような気分になりました。

 で、発表は二本
 

一本目.『表現としての数値―チュートリアル/強度―』

 一本目の内容はこんな感じ。

  • 問:
    • コンピュータ・ゲームは、音/映像/テキストを用いた映画のような複合メディアであるのみならず、インタラクションという要素を持つことがその独自性の源泉として評価されてきた。しかし、コンピュータ・ゲームにおけるもう一つの特徴的な表現要素として「数値」が、ふんだんに使用されている。しかし、「数値」がもたらす表現としての機能は、ほとんど明らかにされていない。本稿では、「数値」の表現機能としての特性についての理論を提示したい。
  • 内容要約:
    • 1.テキストや映像の解釈においては、解釈のあり方は、日常生活世界での意味習得の多様性そのものの数に比例する。よって、テキストや映像は、常に多様なコンテクストにさらされ、解釈され、評価されることになる。そこでは、表現の成否のポイントは、読者/観客の意味解釈のコンテクストにどう接続するか。同時代的/地理的コンテクストへとどう接続するかといった要素と大きく関わることとなる。
    • 2.一方で、数値を介した表現の解釈においては、日常的生活世界とは半ば切り離された概念体系*1を理解することが重要性を持つことになる。作品内における、数値自体の意味は日常生活世界の中においては成立せず、切り離されている*2。よって、「数値」の意味の成立は、コンテクストの多様性への接続を成功させることよりも、数値の意味を解釈するリテラシー(能力)の成立がいかに可能たらしめられているか、ということこそが要点となる。
  • 課題
    • 上記の議論について、より実証的なアプローチを行っていきたい。

 

二本目.『ゲームに参加するとはどういうことか――ゲームコミュニティにおける推理と介入』

 もう一本は、id:ggincに「あなた、いい加減に小品でいいので論文書く訓練なさいな」と、尻を叩いて書かせた『ゲームに参加するとはどういうことか――ゲームコミュニティにおける推理と介入』。1st authorが、id:ggincで、2nd authorがぼくです。ただ、発表予定者がぶっ倒れたので、発表はこちらも僕のほうでppt作りました。
 言いたいことの中身を、議論の中身に落とし込むことについて、まだまだな内容なので、正直、著者の脳内の情報を読者が処理できるものになっている内容ではありませんが…。ゲームについて「推理のゲーム」と見なすメタファーと、「介入可能なゲーム」と見なすメタファーがどう機能し、両者がどう対立し、その対立関係について議論することから、どういった理論的コントリビュートができるか…ということをやりたかった内容。
 一応、概要はこんな感じ

  • 1.問題設定:ゲームプレイにおける、ゲームプレイヤーコミュニティ論と、個室の中でのゲームプレイ体験分析の相互関係を捉える枠組みを提示したい  
  • 2.方法:理論構築のモデルとして、a.個人のゲーム経験、b.に加えてゲームコミュニティを介したゲームが双方成立している事例として、『ひぐらしのなく頃に』『GPM23』をとりあげ、作者へのインタビューや、言説分析を行った。
  • 3.成果:
    • 1.プレイヤーコミュニティ、及び、個別のプレイ体験の双方に有効な要素として「推理の想像力」「介入可能な想像力」といった変数を抽出することに成功した。これらは、同一のゲームというメディア内におきながら、同時に成立してしまう異なる想像力の環境である。
    • 2.上記の二つの変数を元にモデル構築を行った。
    • 3.同一のゲームに対する、同一の想像力の環境下では、プレイ体験からプレイヤーコミュニティに対して、正のフィードバックが働く事例を複数、確認した。
    • 4.同一のゲームに対して、異なる想像力との間にインタラクションが生じるとき、正のフィードバックだけでなく、負のフィードバックも大きく働くことを確認した
    • 5.つまり、想像力の環境に移行が生じる場合、相互の行き来ができない一定のプレイヤーから、ネガティヴな評価が生まれる可能性が高い。
    • 6.しかし、想像力の環境の移行は、意図せざる結果として最終的にポジティヴに働く可能性もある。

 発表内容にご興味をもたれた方がいらっしゃいましたら、メールしていただければ発表資料のほうお送りします。
 

中島雅弘さんのご発表

 ちなみに、大阪電気通信大学のゲーム学会全国大会は、基本的にクオリティ・コントロールはかなりゆるめの場所なので、発表者のクオリティは様々ですが、当日、他に発表されていた方では、アーヴァイン・システムズの中島さんの発表「ゲーム・ソフトウェア開発における 日米のスタイルの違いと多国籍開発の課題と実践」が興味深い内容でした。超部分的にメモ

  • ローカライズの概念についての区分にはこういうものがある
    • I18N : Internationalization −システム的に多言語を受け入れる準備ができている
    • L10N : Localization −特定の一言語について、ソフトウェアを対応させる
    • M17N : Multilingualization −ソフトウェアの内部状態を切り替えて、複数言語に対応させる

それと、あとソフトウェア工学系のお話でした。


 午前中だけ見て、午後はもう東京のほうに帰ってきたので、午後のパネルディスカッションやらは知りません。

*1:Salen&Zimmerman[2003]の概念を使えば、MagicCircleの中の体系。

*2:カウントする、といったようないくつかの機能を除く