Critique of Games メモと寸評

http://www.critiqueofgames.net の人のブログです。あんまり更新しません。

同分野・隣接分野内での略語かぶり

 ただのボヤきですが、最近ちょっとこれはどうかな、と思ったのが「SCM」。

2つある。

  • Structural Causal Models:直訳すると構造因果モデルだが、Pearlの統計的因果推論のことらしい。Pearlの論文読むとよく出てくる。
  • Synthetic Control Method(SCM):合成コントロール法。DID的な分析をするときに、仮想的な比較対象を合成的に作り出す手法。

https://ftp.cs.ucla.edu/pub/stat_ser/r481.pdf

 

 両方とも、統計分野でのかぶりどころではなく、統計的因果推論に関わる同分野内・同トピック内の略語かぶりなので、さすがに混乱する。なんとかしてほしい。

 GLMもつらい。

  • 一般化線形モデル Generalized linear model
  • 一般線形モデル  General linear model

 「RDD」もかぶってる。

  • Random Digit Dialing(適当な番号電話かけまくるサンプリング手法)
  • Regression Discontinuity Design 回帰不連続デザイン

 も、略語かぶりなんで、誰か偉い人がどうにかしてほしい。まあ、でも、サンプリングの話と、因果推論の話は話の文脈でわかるっちゃわかる。

 

ちなみに、自分の分野だと、ゲーミフィケーションまわりだと、「PBL」がちょっとややこしくて、

  • ゲーミフィケーション批判の文脈で出てくる「PBL」= Point, Badge, Leader's board と
  • アクティブ・ラーニングのメソッドとして出てくる「PBL」=Problem Based Learning もしくは、Project Based Learning

 のダブりはちょっと混乱しそうになる。

 あと、「メカニクス」概念も、ゲーム研究内でも概念がブレてるが、経済学における制度設計の文脈での「メカニクスデザイン」も同じ言葉だけど、意味が異なっているので、ややこしい。

 まあ、それ言ったら、FPSとかFirst Person Shooterと Frame Per Secondsで、「このFPSのゲームのFPSちょっとガタついてない?」みたいな発話ができてしまうので、ややこしい。

 まあ、ある程度普及してしまったら、個人がどうこうしようと思っても、どうにもならんのだけど。

スポーツの概念論関係メモ

Replaying Japan 2021 登壇予定

docs.google.com

 

Day 1st

8:15 AM-(もしかしたら、最初に三宅さんの紹介をするかも……?)

 

Round Table Preservation of Video Games

JST Augst 10, 10:15-11:00am (MDT August 9, 7:15-8:00pm)

Akito Inoue | Akinori Nakamura | Masaharu Miyawaki | Jun Ha Lee | Henry Lowood

 

話す予定のこと:

covid 19によるオンライン関係の試みなどludo musica
data scanning の公開はできていない。デジタイズの抱える課題

 

Day 2nd

-

Day 3rd

Session 3 

(1)JST Aug 12 8:00am -9:00am

Yasushi Hara | Kazufumi Fukuda | Akito Inoue | Fumihiko Ikuine,

A Development Process, Scale and Scope of Console Game Industry in Japan: Through Analysis of a Multiple Connected Dataset

 

(2)JST Augst 10, 10:15-11:00am 

Martin Roth | T.L. Taylor | Akinori Nakamura | Yasuo Kawasaki | Akito Inoue

Theme Park Studies in Japan

 

話す予定のこと:

Walking with Videoと、マリオワールドのことなど

 

 

7月3日土曜講座:社会を考えるためのゲーム

本日話したことの、簡単なメモです。

 

(1)議論の射程:

「社会」のありようについて考えるためのゲームを紹介する。

(※網羅的な紹介というわけではありません)


例:『We Become What We Behold』(2016)
https://ncase.itch.io/wbwwb

 

 

ゲームならではの表現(の一部)

・多彩で複雑な表現:インタラクティビディ
・社会の複雑な相互行為によって生じるメカニズム
・「体感することではじめてわかる」ことの理解
・沈黙の時間や繰り返し行動を体験・表現できる

本日の構成:作品群を3つに分けて紹介

相互行為のメカニズムを理解する作品
コミュニケーション行為:前提の歪みと、擬似的な「他者」の現前
実世界の記録そのものを使った「ゲーム」


(2)相互行為のメカニズムを理解する作品

作品例


発表者が関わった作品:『コモンズの悲喜劇』(2020)

昔からのゲーム

  •  『Simcity』(都市設計・運営)、『Civilization』(国家の設計・運営)

近年の作品

関連する概念

「合理的な愚か者」「複雑系」「自生的秩序」「シミュレーション」

論点
  • 前提の妥当性と、複雑な計算の正しさ(REF:妥当性 Validation と正当性 Verificationの区別)
  • 前提の再帰的変化:一般に、ゲームプレイのルール(行為環境の前提)は変化しない →ノミック、前提自体を問うためのゲーム http://masa.o.oo7.jp/minimum_nomic_jp.html
  • ゲームが「前提」自体の歪みを扱うことはできるのか?

 

 

(3)コミュニケーション行為:前提の歪みと、擬似的な「他者」の現前


作品例


発表者が関わった作品:『マナーな食卓』(2021)
https://www.youtube.com/watch?v=nfaeXyOrPhg

近年の作品

その他の作品

  • デトロイト:ビカム・ヒューマン』(2018)
  • 『papers, please』(2013)
概念

他者の「顔」の現前(レヴィナス
・社会派というより、ある種「文学的」なゲームで盛んに表現されてきたもの
ICO』(2001)、『UNDER TALE』(2015)

 

論点

あくまで、社会的問題の再構成などにとどまり、ドキュメンタリー映画のように、
現実の素材そのものを、扱えてはいない。

『This War of Mine』(2014)
『attentat 1942』(2017)Charles University, Czech Academy of Science,
https://www.youtube.com/watch?v=-M9UK89K93M
『1979 Revolution:Black Friday』(2016)iNK Stories,

(4)実世界の記録そのものを使った「ゲーム」

作品


発表者による作品:

デジタルゲーム以外の広い意味での「ゲーム」的実践:「サボナ・メソッド」

概念

・ゲームならではの強みを使いにくい

・「ドキュメンタリー」をめぐる議論
  森達也によるマイケル・ムーア批判:主張なのか、現実の別のあり方を想像させるものなのか

論点

記録映像だと、「ゲーム」メディアの独自の表現上の強みを出しにくい
・「遊ぶごとに結果が変わる」ことがない
・「プレイヤーの努力」がどう反映されるのかがわかりにくい

 

(5)まとめ

ゲームならではの表現(の一部)
・多彩で複雑な表現:インタラクティビディ
・社会の複雑な相互行為によって生じるメカニズム
・「体感することではじめてわかる」ことの理解
・沈黙の時間や繰り返し行動を体験・表現できる
現状、ゲームメディアの課題となっていること
・ゲーム前提となるルールを随時変更していくこと
・現実の素材そのものを扱うこと

井口,2013, 現代日本の大学におけるゲームの利用と満足 -ゲームユーザー研究の構築に向けて-,情報通信学会誌 31(2), 67-76, 2013-09-25

ci.nii.ac.jp

 

  • 気晴らし 因子だけ、時間や金額と負の相関になっているのがおもしろい。気晴らし因子だけ、相関が負になるというのは、カイヨワ的な概念で言えば、「ルドゥス」「パイディア」の区分がはっきりと出ているポイントというのが、この論文でも改めて実証的に確認されたと位置付けてもいいかもしれない。
  • また、相関を各因子ごとに見るだけでなく、こういった内容であれば、共分散構造分析などで、もう少し複雑なモデルを組むこともできそう。
  • ちょっと古い(2013年)の論文なので、最近なだと、GUESSや、UESなどの論文も出てきており、ここらへんとの接続はしていけるとよいかな、と思う。たとえば、下記の論文など
    Phan, M. H., Keebler, J. R., & Chaparro, B. S. (2016). The development and validation of the game user experience satisfaction scale (GUESS). Human factors, 58(8), 1217-1247.

原稿掲載:アルゴリズムを批評するために(1)

『IT批評』のサイトに原稿を掲載していただきました。

『IT批評』という雑誌は、2013年頃にも、「2025年の未来」を2025年の人になりきったふりをして語るという謎の原稿を掲載していただいたのですが、

今回のは、ある意味、もう少し、普通(?)の原稿になります。

 

話としては、ゲームの話というよりはどちらかというと情報社会論的な話といったほうが近いです。ゲームのメタスコアだとか、食べログのスコアだとか我々の日常のなかに埋め込まれつつある情報集約のシステムを、癖のあるキャラのようなものだと思って接することが重要なのではないか、という話を2回に分けて書かせていただいております。

 

アルゴリズムを批評するために(1)

it-hihyou.com

アルゴリズムを批評するために(2)

it-hihyou.com