Critique of Games メモと寸評

http://www.critiqueofgames.net の人のブログです。あんまり更新しません。

盛本 晶子, 時間選好率および現在バイアス性がオンラインゲーム内コンテンツへの課金行動に与える影響, 行動経済学, 2018

学生に教えてもらった。

双曲割引などの研究をしている行動経済学の先生の研究

 

盛本 晶子, 時間選好率および現在バイアス性がオンラインゲーム内コンテンツへの課金行動に与える影響, 行動経済学, 2018, 11 巻, p. 1-13, 公開日 2018/07/10, Online ISSN 2185-3568, https://doi.org/10.11167/jbef.11.1, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbef/11/0/11_1/_article/-char/ja, 抄録:

本稿の目的は,人々がオンラインゲーム内コンテンツの購入もしくはオンラインゲームをプレイすることに対して料金を支払う,いわゆる「課金」行動について時間割引の観点から検証することである.東京国際大学の有志学生に対してアンケート調査を行い入手したデータを分析した結果,(1)時間選好率は課金行動に影響を与えないこと,(2)現在バイアスの程度が強いほど課金する傾向があること,(3)ナイーブの度合いが強いほど課金する傾向があること,の3点が明らかになった.

 

小松 光, ジェルミー・ラプリー『日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす』2021、ちくま新書

  • 読んだ。
  • 右派の人が喜びそうなタイトルだが、PISAデータなどを順当によみつつ、国際的な教育研究における日本の教育の評価や位置づけを述べる落ち着いた内容。主張の仕方が全体的にきっちりとしている感じで、良い本だと言っていいのでは。
  • 主張の内容は、基本的にはタイトル通りではある。
  • 本の内容からはずれた感想になるが、こういう新書は、基本的に記述統計学の範囲内だけで書くもんなんだよなあ……と改めて思った。社会科学関連の新書だと、統計的検定の話とかって言うのは、それほどでてこなくて、学術書だといきなり出てくるという体験をしている人はけっこう多いのではないだろうか。
  • 間を埋めるようなところは、だいたい大学学部の社会調査とか初歩的な統計関係の授業でフォローアップされるわけだが、そこは教育格差としてなにげにひらいてしまうのだよな。
  • 近年は、高校の数学のカリキュラムの中に一応、相関係数とか標準偏差ぐらいまで扱う枠組はできているが、大学生を見ていると、文系の大学生はほとんど理解していないので、「ううむ」という感じはある。
  • もう少し大半の人が習うようなカリキュラムの中に、調査設計の良し悪しとか、エビデンスの強さとか、バイアスとか何かみたいな部分は入れられないかなあと思う。「科学」とか「研究」に関する発想が、漫画に出てくる万能の「ハカセ」みたいなのと、さほど変わらん現状とかってマシにならんのかな、と最近はとくに思う。
  • 英語圏における地球平面論の流行などを見ると、「あー、たしかに日本の教育は、いいほうなのかも……」と思ってしまうが、この2021年における「かなり教育のすすんだ国」のクオリティで現状の日本ぐらいなんです、というのはなんというか、大変だなあ、改めて思う。2021年現在は「民主主義」というプロジェクトを成立させるのはほんとに大変だなと、実感するような事件が目白推しだが2200年とかになったら、世界の教育水準があがって、民主主義ももう少しマシなものになっているのだろうか?

東浩紀『ゲンロン戦記』(2020、中公新書ラクレ)

 

  • 遅ればせながら読んだ。下記、雑駁な感想。
  • 東さんの本は、『動物化するポストモダン2』もそうだったのだけれども、自分が完全にお客さんというわけでもなく、読書体験としてはかなり特殊な部類に入るなと思う。
  • 内容的には、東さんが飲み会などでお話されている雰囲気で概ねの記述がすすんでいくので「まさか、東さんから、こんな見え方をしていただなんて……!」というような驚きはない。けれども、ゲンロンの活動は、内部事情を知らない部分も多かったので、なるほど、そういうことがあったのか、という感じでスルスルと読めた。
  • 言論のプラットフォームをつくるという東さんの仕事は、私のような人間にとっては著しく重要で、本当にお世話になってきたと思っている。特に、2005年6月~2006年6月の1年間は私は、GLOCOMの東浩紀研究室所属ということになっていて濱野くんや、山根さん、松谷さんらと、isedの仕事をやったり、『智場』を編集したり、RGNという研究会をやったりと本当にいろいろとやらせていただいた。そのあとも、数年に一度お会いしたりしつつ、2018年は『ゲンロン8』を一緒に作った。
  • 仕事相手としての東さんについてあまり細かい話を書く気はいまのところないけれども、ゲーム業界を作り上げてきた方のオーラル・ヒストリーを作っていくような仕事をしていると、自分のやってきた仕事の周辺が誰かによって語られた場合、どう見えるのだろうということを考えるが、そう言う意味でいろいろと考えさせられた。
  • 東さん関係で、見えにくくなっていることできちんと記録残しておいたほうがいいことはいろいろあるように思う。
  • 一つは、誰が東さんによって見いだされたかということは、もう少し可視化しやすくなっててもいいかもしれないと思う。濱野くん、宇野さん、黒瀬さんやゼロアカ道場関係者のみなさんなどは、多くの東さんのファンの人からみえているような人は、さすがに誰かが記憶しているとは思う。だが、私ぐらいだと、東さんファンとかからすると「そういえば、そういう人いるね」ぐらい(かな?)の見え方だと、かなりの東さんファンか、東さんに関係の近い人でも無い限り全体像がわからないだろうし、なんだったら関係の近い人でも、わからなくなってきているだろう。
  • たとえ思想的な世界観といったような意味で、それほど東さんの影響下にいるとは言えなくとも、キャリア形成が、東さんによってそれなりに影響を受けた人は少なくないと思う(残念ながら、ネガティブな影響を受けた人も含めて)
  • いわゆるロスジェネ世代あたりから下の年齢で、サブカルチャーに関わるような仕事をしてきた知識人、批評家、研究者だと何らかの形で東さんと関わっていることは多いし、国内の情報社会論や、サブカルチャーをめぐる議論のコミュニティ形成史を考える上で、東さんの影響というのは本当に小さくないと思う。「国内のサブカルチャーに関わる議論はすべて東浩紀の影響下にある」みたいな言い方はさすがに間違っているとしか言いようがないけれど、「影響力の大きかった個人」「議論の場を作ることに注力しようとした個人」という意味では、東さんの貢献は大きい。
  • 東さんよりも下の年齢の、私と同年代前後の論壇的な人だと、チャーリーさんはLIFEを、荻上さんはsessionを、宇野さんはplanetsを、鈴木健さんSmart Newsをつくっている。みんな議論のプラットフォームをつくるという仕事に強い情熱をもっていて、この世代の日本の論壇人が、論壇人としてのプレイヤーである以上に「論壇」そのものの再設計をしようという意思が明らかに強かったということは、後にどう語られるのかわからないけれども、人の発掘と、プラットフォームの議論のプラットフォームの設計をしようということをやっている。
  • もちろん、ちょっと前の世代を考えても、柄谷さんにせよ、浅田さんにせよ「場」をつくるということにはコミットしてたわけだし、それこそ松岡正剛のようなタイプの知識人も前の世代にはもちろんいる。
  • ただ、プラットフォームをつくるというよりは特定の政治的な目標を含んだ「運動」にコミットしてその代表者として活躍してきた知識人とかも多かったのも事実ではある。実際、いまでも知識人を特定の「運動」と結びつけてイメージする人はかなり多いと思う。もちろん、今でも、特定の「運動」の達成を目指す知識人はいるし、別にそれが悪いというわけでもないが、プラットフォームをつくる知識人の活動は、運動家のそれとは近いようで違う。もちろん、大学的な「知」のあり方とも違う。
  • そういうことと絡めて本書は、あと数十年後に知識人論みたいなことをやる人にとっての重要文献になるんだろうなあ、などと思いつつ読んだ。

 

『マナーな食卓』

正式な広報用のURLは、別途作成予定ですが、

『マナーな食卓』をご購入いただいた方向けのとりあえずの情報集約ということで、こちらに簡単な紹介用譲歩をまとめております。

 

<公式ルール>(2021年4月10日更新)

 

『マナーな食卓』


3人用 対象年齢10歳以上 所要時間約20分
内容物: 食材カード(9種類) マナーカード(16枚) 役割カード(5枚)

 

人間、獣人、キノコ人間が共存しているこの世界では、一つの大きな問題を抱えています。それは、「食事マナー」です。なぜなら、他種族のからだが食材になっている料理があるからです。多種族同士で、なかよく、たのしく、おいしく食事をするためには、食材となっている種族に敬意と配慮を払った「食事マナー」が必要です。このゲームでは、料理の食材に敬意を払い、食材の元となる他種族の方に配慮のできたマナーを考えた方が勝者となります。ゲームのプレイヤーはいずれかの種族になり、他種族に配慮した食事マナーを考え、説明し、互いの食事マナーが納得できるかどうかを審査しましょう。

 

youtu.be

 

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2020年度の近況報告

お世話さまです。4月1日ということで、業績書の更新作業をしましたので、一年単位での近況報告です。

CURRICULUM VITAE/履歴書・業績書 - Google スプレッドシート

 

 

1.ゲームや、遊びの提案など

 今年度は、まずボードゲーム『コモンズの悲喜劇』(藤枝侑夏・井上明人、Team Sandbox)をリリースしました………が、Covid 19&ゲームマーケットの中止により、なかなか試遊していただける環境ができず……といった状況でしたので、みなさま、まだ在庫ありますので、ぜひお買い求めください。

tragicomedy-c.jimdofree.com

 

 あと、Covid 19の状況下での遊びの提案ということで、youtube散歩の提案などをしつつ、自分でも、いろいろと撮影したり、アフリカの都市を歩いたりしながら遊んでいました。三宅さん、田端さんらには、発案段階でご相談にのっていただき改めてありがとうございました。

slowinternet.jp

 これは、もうちょっと遊び方をガイドするようなサイトなど作れればと思っていますが、手がまわっていません。

 

 それと、一昨年から『マナーな食卓』というカードゲームを大谷道高や三浦麻乃さんらと作っていたので、4月のゲームマーケットにいらっしゃる方はよろしくお願いします。

 

2.書いたもの

 

 集中力を要するちゃんとした文章は、いつも深夜の漫画喫茶とか、サイゼリアで文章を書くのが常なのですが、今年は、covid 19のため、そのワザがほとんど使えず、正直なところあまり長い文章というのをほとんど書けませんでした。結果的に、今年は文章を書く作業自体が、だいぶ辛い気持ちが強かったという感じでした。自分にとっては、書く「場所」の問題は本当に重要だと実感した次第です。

 

Covid 19以前に書いたものが今年になってリリースされたもの

  • Akito Inoue, Martin Roth. 2020. 「Gamification」『Japanese Media and Popular Culture Keywords』The University of Tokyo Interfaculty Initiative in Information Studies
  • 井上明人. 2020. 「多層的な現象としてのゲーム」『デジタルゲーム研究入門』

 

2020年度に書いたもの

  • 井上明人. 2020. 「游戏论·历史的维度|日本游戏批评小史:“厉害”的游戏文化」『澎湃新聞』 ※日本語で書いたものを翻訳していただきました。
  • 井上明人. 2020. 「「意図せざる社会秩序」の生成を表現するメディアとしてのゲーム」『美術手帖』, 1083, pp90-91
  • 井上明人. 2021. 「『パラッパラッパー』解説原稿」『Ludo musica展カタログ』, , pp18-19
  • 井上明人、尾鼻崇、中村彰憲、細井浩一. 2021. 「持続可能なゲームアーカイブの構築のための専門性についての一考察」『アート・リサーチ』, 21, pp93-102

 

あと、planets連載も、covid 19以後だいぶご迷惑をおかけしていて、下記ぐらいしか書けていない状況でした。

アジアを羽ばたいてしまっている異世界転生|井上明人|PLANETS|note

 

 

3.学会・カンファレンス等での発表

 長い文章は書けずとも、パワポは作れるという感じで、学会発表自体は下記のような感じでいろいろな形でやらせていただきました。

 

4.ゲーム保存関係の事業

 2020年は、2019年までよりも、いろいろな方に頼らせていただいた感じになりました。

 しばらくしたら、下記のサイトのほうで、報告書が掲載されるかと思いますが、

メディア芸術カレントコンテンツ - マンガ・アニメ・ゲーム・メディアアートをもっと知るための情報サイト (bunka.go.jp)

 2020年度は、一昨年まで僕がやっていた仕事の多くを尾鼻崇先生に担っていただき、尾鼻さん中心で、国内のゲーム保存のための連絡会議の開催(ゲームアーカイブ推進連絡協議会)や、ゲーム音楽展の開催、CEDECでの発表などをやっていただきました。

 立命館のゲーム研究センター全体ということでは、同僚の福田さんが中心となって作成した先進的なデータ構造を備えたゲームのオープンデータである、RCGS CollectionがDAPCONでデジタルアーカイブ産業賞 技術賞をいただくなどといったことがありました。

 

4.オンライン授業

 Covid19下で、実質的に一番時間を割かれたのは、たぶんどこの大学の先生もそうだと思いますが、授業でしたね……。アウトプットをお見せできないので恐縮ですが、まあ、大変でした。

 いろいろ、試行錯誤ができたので面白くもありましたが。授業のアシスタントをしていただいた、安田さん、辻さん、木下さんらにもだいぶ助けられました。

 

5.学生指導

 また、2020年度は、細井・井上共同ゼミののゼミ生が、はじめてのゼミ生が卒論を書きあげる年でもありました。指導した学生の論文が学部の最優秀の賞をいただけるなどといったこともあり、私も嬉しかったです。

 また、専任ではないところだと、立命館の先端研の大学院生のみなさんが中心になって実施したマインクラフトのプロジェクトの予算申請書のとりまとめをさせていただいたり、

 京都大学の大学院生の閻さんの修論のサポートなどさせていただきました。

 みなさん、とても優秀で、私が教えられることのほうが多かったです。

 

6.助成金科研費等の応募

 科研費などの大きめの予算への応募で、いろいろな方のご協力をいただき、みなさま、その節は大変ありがとうございました。

 なかなか2020年度は予算獲得には至りませんでしたが、次年度以後も内容をブラッシュアップさせる形で申請していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

7.その他:たくさんの勉強会・研究会・研究プロジェクト

 昨年度はあとは、勉強会がいろいろと盛んだったなというように思います。なんか昨年度は、かなりいろんな読書会やら、勉強会を主催したり、参加していたように思います。

 特に、勉強会を主催していただいた先生方、また私が主催した研究会にご参加いただいたみなさまには改めて御礼申し上げたいと思います。

(ちょっと、勉強会によって外に出していい話だったかどうか微妙な状態のものも多かったので、恐縮ながら、各研究会等の名称は割愛させていただきます)

 これは怪我の功名とでもいいますか、2020年度にみんながオンラインベースになった影響なんだと思いますが、オンラインでの勉強会が昨年はとても沢山増えたなという年でもありました。

 関東と関西の垣根を超えるのはもちろんとして、ヨーロッパ、アメリカ、アジア各国にいる方と一緒に議論ができ、「対面は無理だしね」という割り切りがある意味でよい方向に働いた部分だったかな、と思います。

 

8.肩書等

 昨年度の肩書等の変化は特にありませんが、一橋のCAREEプロジェクトの原先生らと一緒に研究をはじめたことで、一橋CAREEの客員研究員に名前を加えていただくことになりました。ありがとうございます。

 今年、2021年度の4月からの私の肩書等は、特に変わりません(立命館大学映像学部専任講師)が、非常勤を一昨年から一コマ持たせていただいている京都大学文学部に、長年の研究仲間である松永さんが今日から常勤の職を得ることになり、自分のことのように(というか、自分のことよりも)嬉しく思っております。

 

 個人的な体感としては、正直、昨年度は、ほとんど筆がすすまなかったのであんまりアウトプットが出ず、ダメだったなあという感触があったのですが、こうして振り返ると、意外といろいろやってたな……という気もします。

 

 

 みなさま、2021年度もよろしくお願いいたします。

科学リテラシーをめぐるクイズ

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植原さんの本と、標葉、福山、江間さんらの本。

  • どちらも、授業に使えそうな感じだが、大教室での講義用に使えそうなのは、後者の『残された酸素ボンベ』こと、nocobonだろうか。学生の眠気を覚ますためのクイズということでは優れている。ただし、たいがいに理不尽系の答えなので、デブリーフィング混みで使わないと、ただの特殊なナゾナゾのようなものとして消費されてしまいかねない感もあるので、導入にはファシリテーター必須という感触はある。
  • 他方で、植原さんの『思考力改善ドリル』は、問題数も多く「ドリル」という名前の通り一通りこなしたら、だいぶ体系的に考える基礎力を養えるという大きな利点がある。ただ、クラスの中のアクティブラーニング的なものに直接応用するには、もう一工夫必要かもしれない。とはいえ、一工夫程度でなんとかなりそうなので、ゼミとか少人数の講義での「素材」としては、かなり良い気はする。

植原本を、ゲーム的に使うための方策を少し考えてみたい。

都市空間と遊び系、メモ

『Tired of』

note.com

 

遊戯道路と、歩行者天国の制度

歩行者天国 - Wikipedia

 

プレーパーク

プレーパーク - Wikipedia

 

松陰神社通り

http://shoin-dori.com/universal2.pdf

 

イギリスでの取り組み,playing out 。かなり洗練されている。

Playing out - bristol.gov.uk

 

aldo van eyck playgrounds

www.google.com

京都のちびっこ広場

[https://www.google.com/search?client=firefox-b-d&tbs=lf:1,lf_ui:1&tbm=lcl&sxsrf=ALeKk00JztpXYOyi30hjQtqfBPxASDr6Vw:1612097930928&q=%E3%81%A1%E3%81%B3%E3%81%A3%E3%81%93%E5%BA%83%E5%A0%B4&rflfq=1&num=10&ved=2ahUKEwiG-4_knMbuAhWIfn0KHQqMDTcQtgN6BAgDEAc#rlfi=hd:;si:;mv:[[35.029483255930764,135.78054699602183],[34.97576937861992,135.7063034504896],null,[35.00263072515357,135.7434252232557],14]]